「次世代脳」プロジェクト 冬のシンポジウム 2016 開催レポート

昨年12月に開催いたしました、「次世代脳」第1回冬のシンポジウムでは、多大なるご協力を賜り誠にありがとうございました。おかげさまで、470名を超える研究者の方にご参加いただきました。
各イベントの主催者または参加者の方に執筆いただいたレポートをご紹介いたします。
また、参加者の皆様にご協力いただきましたアンケートの結果も掲載いたします。
ご感想および2017年度のシンポジウムに向けてのご提案ご提言などがございましたらContactよりどしどしお寄せください。
今後とも「次世代脳」プロジェクトをよろしくお願いいたします。

新学術領域研究 「グリアアセンブリ」「温度生物学」「動的秩序と機能」
公開合同シンポジウム

脳機能の理解には異分野との連携・融合が必要であることが叫ばれて久しい。今回の3領域合同シンポジウムでは生命科学の融合領域研究拠点として脳科学をどのように攻略できるか話し合った。
新学術領域「温度生物学」(富永真琴領域代表)では生体が温度をどのように感知してそれに対応するのかを研究しており、脳神経系の発達を考える上で興味深かった。
新学術領域「動的秩序と機能」(加藤晃一領域代表)では、システムを構成する多数の分子素子がダイナミックな離合集散を通じて秩序構造を形成し、外的環境との相互作用を行いつつ、自律的に時間発展していく仕組みを明らかにすることを目的としているが、このアプローチは脳科学においても是非必要なものであった。
新学術領域「グリアアセンブリ」(池中一裕領域代表)では、脳神経系の機能が神経細胞間のコミュニケーションだけでなく、グリア細胞と神経細胞、さらにグリア細胞間のコミュニケーションも重要であることを明らかにした。
脳科学研究のための融合領域研究拠点形成にも今回の情報を役立てたい。

新学術領域研究「脳タンパク質の老化」公開シンポジウム
一脳タンパク質の老化と神経変性一

私から領域概要ならびに、タウと神経回路イメージングを用いた脳タンパク質老化と神経回路破綻の可視化研究成果を提示した。次いで高島先生から局所異常分布を中心としたタウのタンパク質老化と毒性機序の獲得、長谷川先生からTDP-43を中心としたタンパク質の老化基盤と病原性タンパク質の伝播機構、岡野先生からiPSとマーモセットを用いた神経変性疾患の病態解明研究について、最後に田中先生からタンパク質の凝集化に着目した新規な精神障害発現機構の解明についてお話いただいた。活発な質疑応答がなされた会であった。

AMED 企画シンポジウム
「革新的技術開発と治療戦略の最前線」

AMED事業「革新脳」および「脳プロ」参画研究者7名がそれぞれ取り組んでいる研究について紹介した。「革新脳」からは、脳活動の可視化・操作をより広域化・高解像度化する最新技術開発と研究成果について、「脳プロ」からは、オキシトシンをターゲットとした自閉スペクトラム症の病態解明と治療法の開発を目指した臨床研究と基礎研究について講演が行われた。活発な質疑討論が行われ、AMEDと新学術領域に参画する研究者が相互に交流を図る良い機会となった。今後もこのような活動を通して、それぞれの研究が融合的により一層進むことを期待したい。

「次世代脳」実行委員会企画プログラム
「日本の神経科学~温故知新~」

本企画は、我が国の脳神経科学の礎を築かれた著名な先生方の研究や想い出とともに、関連する研究分野の最新の知見を紹介する新シリーズ企画である。第一回は、故・塚原仲晃先生を特集した。村上富士夫先生からは塚原先生の脳可塑性を担うシナプス発芽に関する研究や在りし日の想い出をご紹介いただき、狩野方伸先生からは発達期のシナプス刈り込みについて、飛田秀樹先生からは障害運動機能の回復メカニズムについて、最新の研究成果をご講演いただいた。塚原先生の研究者・教育者としての偉大な足跡が我が国の脳神経科学の発展に大きく貢献したことを学ぶ、貴重な機会となった。

「次世代脳」実行委員会企画プログラム
「脳科学に活かす人工知能」

近年、人工知能の研究開発が劇的に加速しており、革新的な研究ツールとして人工知能を脳科学に活かせる可能性が高まってきた。この企画では、山川宏、高橋恒一、石井信、川人光男各先生が、最先端の脳科学と人工知能の関わりについて具体的に解説した後に、池谷裕二先生の司会で会場からの質問に基づいて脳科学と人工知能の未来を語るパネルディスカッションをおこなった。次世代の脳科学の到来を予感させる盛り上がりであった。

新学術領域研究「 こころの時間学」「 オシロロジー」
公開シンポジウム

次世代脳 冬のシンポジウム最終日に、新学術領域研究の「こころの時間学」と「オシロロジー」の合同公開シンポジウムが行われた。それぞれの領域から6名の演者が交互に、ニューロンネットワークモデルによる疾患の病態、オシレーションモデルによる時間知覚、脳画像にみられるオシレーション、海馬オシレーションによる記憶モデル、グリア細胞によるオシレーション制御、記憶における海馬オシレーションの意義などについて講演を行った。大講堂での開催で、どれほど集中できるか不安ではあったが、約200名の参加者が活発な討論を行った。オシレーションは時間軸上での現象であるし、またオシレーションを利用して時間を計測するなど、この両者は馴染み易い領域であることを認識した。今後も共同研究や研究会などを通して交流していければと思う。

「次世代脳」実行委員会企画プログラム
「論文カバーレターとアブストラクト書き方講座」

次世代脳プロジェクト冬のシンポジウムの企画として、新学術領域「記憶ダイナミズム」の評価委員でもある元Neuron誌の編集者チャールズ横山氏(現理研・研究業務担当部長)を招き、「論文カバーレターとアブストラクト書き方講座」を開催した。論文を投稿した時の最初の大きな関門が、査読にかけるかどうかの編集者による評価である。編集者が論文の何をみて判断するのか?を中心に、必ずしも一致しないジャーナル毎の判断基準を逆手に取った裏技なども紹介された。講演中だけでなく、講演後も質問が途切れない盛況な講演会であった。

新学術領域研究 「適応回路シフト」「記憶ダイナミズム」「マイクロ精神病態」
「三領域合同若手シンポジウム」

昨年(包括脳)に続き、「適応回路シフト」「記憶ダイナミズム」「マイクロ精神病態」三領域合同若手シンポジウムを開催した。各領域を代表する新進気鋭の研究者12名が、分子・シナプス・回路・システム・行動の階層を超えて、行動適応や記憶学習や精神疾患の仕組みの解明を目指す最新の研究成果を紹介し合った。領域の枠を超えて活発な質疑応答がみられ、次世代の研究者を育成する学術交流の場として確かな手ごたえを感じた。

新学術領域研究 「共感性」「自己制御」
合同次世代育成シンポジウム

新学術領域研究「共感性」「自己制御」合同次世代育成シンポジウムでは、各領域から3名ずつが交互に成果発表を行った。本シンポの特色は、自己制御領域代表の笠井教授が始めに述べた通り、共通点を有する両領域の研究者がペアとなり事前に相互に質問を提出、その回答も織り交ぜながら発表が行われた点にある。これにより、評価者の先生方のお話に象徴されるようにヒトを取り巻く二つの重要な視点が融合して理解され、単なる各々の発表に留まらない有機的な交流が成された。共感性領域代表の長谷川教授の締めくくりの言葉通り、三回目の合同シンポとなる今回、今まさに論文になる旬の研究が盛り沢山で、両領域の成熟のうかがえる3時間となった。