「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウム2019
若手優秀発表賞 受賞者発表

若手研究者によるポスター発表の中から特に優れた発表に対して、若手優秀発表賞を表彰いたしました。

おめでとうございます!!

2019年度は74名ものご応募をいただきました。
4つの研究領域ごとに厳正なる審査を行い、以下の18名が若手優秀発表賞に選ばれました。

  • 分子脳科学領域

  • 征矢 晋吾(筑波大学)
    Deciphering a novel neural circuit in the central amygdala implicated in regulation of social behavior
  • 宮下 聡(国立精神・神経医療研究センター)
    CyclinD1による翻訳後修飾を介したタンパク安定化機構が神経前駆細胞の増殖維持に果たす役割
  • 中村 幸太郎(東京大学)
    脳梗塞において細胞外のDJ-1は無菌的炎症を引き起こす
  • 辻 竜平(東京農業大学)
    ビタミンB1欠乏は脳内炎症による海馬神経変性と転写因子CREB不活性化を介して記憶障害を引き起こす
  • 回路脳科学領域

  • 渡邉 貴樹(東京大学)
    Protocadherin 10 delays developmental climbing fiber synapse elimination in a subset of aldolase C-positive Purkinje cells in the cerebellum
  • 太田 桂輔(理化学研究所)
    In vivo calcium imaging with a single cell resolution using “cosmoscope”, a new wide-field two-photon microscope
  • 伊澤 俊太郎(名古屋大学)
    レム睡眠中に記憶忘却を引き起こす視床下部―海馬間の神経回路
  •  
     
  • システム脳科学領域

  • 谷本 悠生(理化学研究所)
    Basal ganglia output to cortex encodes predictive information for goal-directed behavior in zebrafish
  • 小山 佳(量子科学技術研究開発機構)
    DREADDによる、報酬を基にした柔軟な意思決定におけるサル前頭眼窩野およびその皮質下領域への経路の役割の解明
  • 池上 暁湖(神戸大学)
    Microglia manipulate synapses by surveying and touching them in both homeostatic condition and learning
  • 細川 大瑛(東北大学)
    ヒトの個性形成とその神経基盤に関する統合的研究-相貌認知の神経基盤-
  • 川端 政則(玉川大学/東京医科歯科大学)
    脳の状態変化を捉える行動課題の確立と大脳皮質における感覚・運動関連活動の分布
  • 高橋 未来(旭川医科大学)
    ネコ前肢リーチング動作に随伴する姿勢制御の時空間的定量化
  • 宮坂 藍(筑波大学)
    性行動中の雄マウスのドパミン動態と自動行動検出プログラムの開発
  • 大久保 正貴(明治大学)
    GABAergic and dopaminergic systems in the nucleus accumbens affect a cue-selection task for assessing the waiting behavior
  • 小山 雄太郎(生理学研究所)
    Semi-model free analysis of whole brain activity captures dynamics of cognitive processes
  • 病態脳科学領域

  • 加藤 大輔(名古屋大学)
    Motor learning requires myelination to reduce asynchrony and spontaneity in neural activity
  • 白井 福寿(理化学研究所)
    統合失調症モデルマウスのシナプスの形態・機能学的解析:巨大なスパインの発見

VOICES

征矢 晋吾(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)

Deciphering a novel neural circuit in the central amygdala implicated in regulation of social behavior

 この度、「次世代脳プロジェクト〜冬のシンポジウム」にて表記の演題で優秀発表賞を頂きまして大変光栄に思っております。博士課程からご指導いただいている櫻井先生を始め、共同研究者の方々にこの場を借りて深く感謝申し上げます。
 本研究は、ニューロペプチドB/Wの受容体であるNPBWR1の生理的役割を解明するため、NPBWR1が強く発現する扁桃体のニューロン群の入出力系を描出し、特に脳幹に投射するNPBWR1発現ニューロンが社会行動および情動応答の制御に関わることを報告させていただきました。今後は、NPBWR1が制御する神経基盤が社会的接触前後における個体間距離の調節に果たす役割を解明すべく、実験動物だけでなくヒトの研究も視野に入れた方向性を模索していきたいと思っております。まだ形にこそなってはいないものの、このような賞をいただき、これまでの知見から導いた仮説が一定の評価を得られたことはとても嬉しく、今後論文として投稿する上での自信となりました。
 最後になりましたが、このような素晴らしい発表の機会をご用意して下さった大隅先生、選考して下さった先生方に厚く御礼申し上げます。

中村 幸太郎(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)

脳梗塞において細胞外のDJ-1は無菌的炎症を引き起こす

 若手優秀発表賞という栄えある賞を頂きましたこと、誠に光栄に存じます。現在私は脳梗塞の病態を中心とした脳内炎症のメカニズムを研究しております。今回の発表では、脳梗塞後の脳内で虚血壊死に陥った脳細胞から放出され、脳内に浸潤してきた免疫細胞を活性化して無菌的な炎症を引き起こし、脳梗塞後の病態を悪化させる自己組織由来の炎症惹起因子(DAMPs: damage-associated molecular patterns)としてDJ-1というタンパク質を新たに報告いたしました。
 冬のシンポジウムは今回が初の参加でしたが、分子レベルから回路、構造レベルまで脳神経科学の幅広い分野の研究者が集まっており大変良い刺激をもらいました。今後は、神経化学と免疫学を融合させた神経免疫学を「炎症」という観点から新しく切り拓くべく研究に邁進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
 最後になりますが、本研究をご指導頂きました東京都医学総合研究所の正井 久雄プロジェクトリーダーならびに共同研究先であります脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田 崇リーダー、酒井 誠一郎先生、津山 淳先生ならびに、発表の機会を与えてくださった次世代脳プロジェクト関係者の先生方に厚く御礼申し上げます。

渡邉 貴樹(東京大学 大学院医学系研究科)

Protocadherin 10 delays developmental climbing fiber synapse elimination in a subset of aldolase C-positive Purkinje cells in the cerebellum

 この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウムの若手優秀発表賞に選んでいただき、大変光栄に思います。今回発表した研究は、小脳のプルキンエ細胞でおこる登上線維のシナプス刈り込みは小脳全体で均一に進むのだろうか、そうでないならなぜなのか、という問いに答えようというモチベーションで進めてきました。長い時間をかけてようやく少しずつ分かってきたところですが、某先生から「もうちょっと!」と言われるほど未完成で、まだ調べたいことが山ほどある状況です。それでもこのような賞をいただけたことは大変励みになり、少しばかりの自信になります。できるだけ早く論文にまとめて発表できるように、これからもより一層精進していく所存です。
 この研究は多くの方の協力のおかげでここまで進められました。特に、狩野方伸教授のご指導と、一緒に実験していただいている技術専門職員の松山恭子さんをはじめとする研究員と大学院生、スタッフの皆様に心から感謝を申し上げます。

伊澤 俊太郎(名古屋大学環境医学研究所)

レム睡眠中に記憶忘却を引き起こす視床下部―海馬間の神経回路

 この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウム2019において若手優秀発表賞を頂き、大変光栄に感じています。本研究は睡眠と記憶の関係をテーマに、視床下部のメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中の記憶忘却に働くことを明らかにしました。MCH神経の一部は記憶の中枢である海馬に密に投射し、レム睡眠中に活発な活動をしています。この際、海馬錐体細胞の活動を抑制し記憶の忘却をもたらしていることがマウスを用いた神経活動操作や行動実験から分かりました。シンポジウムのポスターセッションでは多くの先生と密な議論をさせて頂きました。領域研究の中心を担われている先生とポスターという近い距離でお話できたことは、他ではあまり経験できない貴重な機会だと感じます。このような機会を作ってくださった次世代脳に関係する先生方、事務局の皆様、そして本研究を指導下さった山中章弘教授に深くお礼申し上げます。今回の受賞を励みに、より一層研究に勤しむ所存です。

谷本 悠生(理化学研究所 脳神経科学研究センター)

Basal ganglia output to cortex encodes predictive information for goal-directed behavior in zebrafish

 この度は若手優秀発表賞に私の研究を選出していただき、大変有り難うございます。本研究は、所属研究室で開発された仮想空間システムを用いて、意思決定中のゼブラフィッシュの大脳基底核出力を大規模イメージングすることを試みたものです。この実験系では、ゼブラフィッシュのコンパクトな脳の利点を生かして、大脳基底核から大脳皮質への出力を担う軸索末端の活動を、終脳の片半球全域に渡ってカルシウムイメージングすることが可能です。これにより仮想空間においてGo/No-go課題を学習させたところ、ゼブラフィッシュの大脳皮質全域から、そのときの周囲の状況に対する正・負の価値情報をコードする軸索活動が見出されました。発表当日は、これまで哺乳類の大脳基底核分野で活躍されてこられた先生方とも有意義な議論をさせていただき、今後の研究方針を検討する上で非常に勉強になりました。今回の受賞を励みに、これからも今まで以上に研究活動に勤しむ所存です。最後になりましたが、本研究について日頃よりご指導頂いている岡本仁チームリーダーをはじめ、お世話になっている方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

池上 暁湖(神戸大学大学院医学研究科)

Microglia manipulate synapses by surveying and touching them in both homeostatic condition and learning

 この度は「次世代脳冬のシンポジウム2019」にて若手優秀発表賞に選出いただき、大変光栄に存じます。本研究では、脳の免疫細胞ミクログリアが恒常状態の脳で絶えず繰り返している突起伸展・退縮運動の生理的意義を検討しました。今回は運動学習の実験系を用い、一見ランダムな突起の動きが、実は状況に応じて目指すシナプスを変えていること、そしてその接触がスパインの形成や除去を引き起こすことを明らかにしました。
 あらゆる細胞の働きざまを生きた脳の中で覗くことのできる2光子イメージングが大好きです。わたしたちの人生の大半を占める恒常状態でこそ細胞は忙しく働いていて、注意深く眺めるとそのとてもよくできた仕組みが浮かび上がってきます。緊張しながら臨んだ今回の発表では様々な分野の先生方にご意見をいただき、思いがけない質問も頂戴して、またさらに疑問点や検証してみたいことが次々と出てきた貴重な一日となりました。この経験と受賞の嬉しさを糧に、今後も精進して参ります。最後になりましたが指導教官の和氣教授、そして様々な形でお支えくださっている先生方やみなさまに、この場をお借りし心より感謝申し上げます。

加藤 大輔(名古屋大学大学院医学系研究科)

Motor learning requires myelination to reduce asynchrony and spontaneity in neural activity

 この度は若手優秀発表賞に選出して頂きまして、大変光栄に存じます。また、本研究を遂行する上にあたりご指導頂きました東京大学の松崎政紀教授、生理学研究所の鍋倉淳一教授、名古屋大学の和氣弘明教授、そして研究室の皆様方にこの場を借りて深く御礼申し上げます。
  近年、学習には関連する脳内の多領域間での効率的な情報処理が必要不可欠とされ、領域間をつなぐ髄鞘化された軸索である白質の機能が注目されています。しかしながらこれまで、髄鞘の機能障害が神経回路活動にどのような変化をもたらすのかは不明でした。本研究では、髄鞘の機能障害で運動学習が障害される時の神経回路活動基盤およびその発生メカニズムを同定し、さらに異常な神経活動を神経回路において補正することが、学習障害の改善に有効であることを明らかにしました。アルツハイマー型認知症では病初期から白質機能が障害されるため、今後、髄鞘機能の補正を神経回路レベルで行うことが治療法の一つとなるのではと期待しています。この受賞を励みとし、日々の臨床で実感する病態・治療法に関する疑問点を解決するために、これまで以上に神経変性疾患研究を精力的に進めていきたいと考えております。

白井 福寿(理化学研究所 脳神経科学研究センター)

統合失調症モデルマウスのシナプスの形態・機能学的解析:巨大なスパインの発見

 この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウム2019において若手優秀発 表賞に選出して頂きましたこと、大変光栄に存じます。ご指導頂いている林(高 木)朗子先生や、研究室のメンバーを始め、お世話になった多くの方々にこの場 を借りてお礼申し上げます。本研究では、統合失調症モデル動物脳内で発見した 巨大な樹状突起スパインに着目し、スパインの変化が病態において本当に意味が あるのか?行動や発火に関係するのか?という問いをとことん突き詰めようと取 り組んできました。実験系の立ち上げに苦労したり、行動解析でテストした項目 の多くで変化が見られなかったりと、どうなるのか行く末を案じた日々もありま した。それだけに、作業記憶のスコア低下やスパインとの相関を見出した時の興 奮は忘れられません。現在は面白い知見が得られつつあり、精神疾患病態のメカ ニズムに迫るスタートラインにやっと立てたような気がしています。今回の受賞 を励みにして、精神疾患の病態解明という目標に向けて今後も精進いたします。

ポスター発表要項

ポスター発表について
ポスター発表要旨 (閲覧にはIDとパスワードが必要です。参加登録いただいた皆様にメールで送付しています。)

発表日時・場所

  • 12月19日(木)9:00~15:00 一橋大学一橋講堂、中会議場1-3にて開催いたします。
  • コアタイムは11:00~14:00です。一般枠でご発表の方は指定討論の時間を設けておりませんので、適宜休憩を挟みながら自由にご発表、ご議論ください。
  • 若手優秀発表賞の発表時間は11:00~13:00です。発表者は休憩を挟みつつポスターの前で待機してください。
  • 12月19日(木)10:30までに掲示してください。15:00までに剥がしていただき、お持ち帰りください。

演題の登録について(10月23日午前10時をもって受け付けを締め切りました)

  • 演題の登録は《参加申し込みフォーム》の赤いボタン「 ポスター発表用登録はこのバナーをクリック!」をクリックし入力してください。
  • 要旨は全角400字程度(英語半角200語程度)で作成ください。
    (入力フォームは途中保存できません。また入力できる形式はテキストのみです。)
  • 発表者名・所属・発表タイトルはWEBで公開します。要旨部分はパスワードで保護したWEBページに掲載いたします。研究に関係した知的財産権等の申請を予定している場合はご留意ください。
  • 他の学会発表等との重複発表制限の対象外とします。
  • なお口演発表の抄録はオンラインでの登録受付は行っておりません。シンポジウムオーガナイザーからの連絡にご対応ください。(事前参加申込は必要です)

その他

  • ポスターパネルのサイズはヨコ90cm ×タテ210cmです(上部に20cmx20cmのポスター番号札を貼ります)。形式は問いませんが、発表タイトル・authorsは必ず記載してください。
  • 言語は和文・英文どちらでも構いません。
  • 若手研究者によるポスター発表の中から特に優れた発表を選考し、若手優秀発表賞として表彰を行います。応募方法は下記のとおりです。
若手優秀発表賞について

次世代脳プロジェクトでは、若手研究者によるポスター発表の中から特に優れた発表を選考し、若手優秀発表賞を授与します。

応募資格

  • 学部生・大学院生など博士号未取得者および博士号取得後10年以内の若手研究者。
  • 有資格者のすべては『若手優秀発表賞』に応募できます。博士号未取得者は将来性を重視した『【学生枠】若手優秀発表賞』を希望できます。
  • 発表演題登録時に「【一般枠】若手優秀発表賞の審査を希望する」、「【学生枠】若手優秀発表賞の審査を希望する」のいずれかをプルダウンメニューから選択することによって、若手優秀発表賞へ応募することができます。
  • 過去に受賞された方の応募も可能ですが、発表時に研究の進展状況を明確にしてください。

選考方法について

  • 各専門領域の審査員が複数人で採点を行い選考します。
  • 口頭説明も採点項目に含まれますので、若手優秀発表賞の発表時間(11:00-13:00)はポスター前に待機してください。

【採点方法】

以下の3項目について(学生枠は2項目)各々1~4の4段階の評価を各審査員が行います。

  • 採点項目(1):学術的重要性(発展性、普遍性、新規性、独創性)、分野融合性、技術的な改良、実験上の工夫、社会に与えるインパクトなどを要旨とポスターから評価。
  • 採点項目(2):発表データの質とそこから導き出される考察の論理的妥当性、発表の構成や見やすさ、口頭説明のわかりやすさや研究内容に関わる知識を評価。
  • 採点項目(3):代表的論文(5件以内)からこれまでの実績を評価。

researchmapを参考にする場合があります。researchmapのアカウントをお持ちの方は11月末までに、最新のデータに更新しておいてください。

【採点法】

一般枠=(1)+(2)+(3) (12点満点)、学生枠=(1)+(2)(8点満点)で計算し、各領域の全審査員の平均を総合評価とする。

 

選考結果について

  • 同日の15:40頃、シンポジウム受付前に選考結果を掲示します。

授与式

  • 同日の18:00から一橋講堂で表彰状授与式を行います。
  • 受賞者は前のセッション(ヒトの脳回路機能の解明に向けて)が終わり次第、一橋講堂舞台に向かって右側前方の舞台袖にお集まりください。