Joint Researches

共同利用研究

計画共同研究 2008年度

計画共同研究は、研究者の要請に基づいて生理学研究所が自らテーマを設定する。19年度までは、「遺伝子操作モデル動物の生理学的、神経科学的研究」と 「バイオ分子センサーと生理機能」の二つが行われた。20年度からは、「多光子励起法を用いた細胞機能・形態の可視化解析」と「位相差低温電子顕微鏡の医 学・生物学応用」が開始された。
計画共同研究は、研究者の要請に基づいて生理学研究所が自らテーマを設定する。今年度は、「遺伝子操作モデル動物の生理学的、神経科学的研究」と「バイオ 分子センサーと生理機能」の二つが行われた。20年度からは、「多光子励起法を用いた細胞機能・形態の可視化解析」と「位相差低温電子顕微鏡の医学・生物 学応用」が開始された。さらに21年度からは「マウス・ラットの行動様式解析」が開始された。いずれも現在最も高い関心を寄せられている領域であると同時 に、生理学研究所が日本における研究の最先端をいっている分野でもある。多くの共同研究の申請を期待している。

 

20年度から開始された2つの計画共同研究の詳細は、次の通りである。

「多光子励起法を用いた細胞機能・形態の可視化解析」

2子励起顕微鏡システムは、低侵襲性で生体および組織深部の微細構造および機能を観察する装置であり、近年国内外で急速に導入が進んでいる。しかし、安定 的な運用を行うためには高度技術が必要であるため、共同利用可能な機関は生理研が国内唯一である。現在、2台の正立(in vivo実験用)と2台の倒立(in vitro実験用)の2光子励起顕微鏡が安定的に稼動している。その性能は世界でトップクラスであり、レーザー光学系の独自の改良により、生体脳において 約1mmの深部構造を1 µm以下の解像度で観察できる性能を構築している。深部観察技術に関しては、科学技術振興機構の産学協同プロジェクトにおいて光学顕微鏡メーカーと共同開 発を行なった。また、生体内神経細胞のCa2+ 動態イメージング技術の確立および長時間連続イメージングのための生体固定器具の開発を行うとともに、同一個体・同一微細構造の長期間繰り返し観察技術の 確立を行った。

「位相差低温電子顕微鏡の医学・生物学応用」

永山國昭教授により生理学研究所で開発された位相差電子顕微鏡は、特に低温手法と組み合わせることで威力を発揮する。無染色の生物試料について生状態の構 造を1 nm分解能で観測可能である。過去数多くの部門内共同研究において、先端的な研究を拓いてきたが、その手法をさらに幅広い医学、生物学のフィールドで有効 利用できるよう、計画共同研究をスタートすることとした。対象は、受容体やチャネルなどの膜蛋白質、各種ウィルス、バクテリア全載細胞、そしてヒトの培養 細胞である。特に、生きた細胞中の分子過程の高分解能観察が生物機能につながる研究に期待したい。
21年度からは「マウス・ラットの行動様式解析」が開始された。
遺伝子改変動物を用いて、遺伝子と行動を直接関連づけられることが明らかとなってきた。このような研究においては多種類の行動実験を一定の方法に則って再 現性よく行うことが要求される。このような実験を各施設で独立して行うことは極めて困難であり、無駄が多い。生理学研究所では動物の行動様式のシステマ ティックな解析を全国の共同利用研究に供するために、行動・代謝分子解析センターに行動様式解析室を立ち上げた。この施設に日本におけるマウス行動学の権 威である宮川博士を客員教授として迎え、平成21年度から計画共同利用研究「マウス・ラットの行動様式解析」を開始した。平成21年度はまずマウスの解析 から行う。

2008年度採択表

(1)遺伝子操作モデル動物の生理学的,神経科学的研究
(2)バイオ分子センサーと生理機能
(3)位相差低温電子顕微鏡の医学・生物学応用
(4)多光子励起法を用いた細胞機能・形態の可視化解析

No. 研究課題名 氏 名 課題名
1 位相差低温電子顕微鏡によるバクテリア細胞内核酸の動態観察 金子 康子
埼玉大・教育
(3)
2 白色脂肪細胞における容積センサーアニオンチャネルのインスリン抵抗性発症への関与の検討 井上 華
東京医科大
(2)
3 TRPM7と容積感受性クロライドチャネルの機能的相互作用とその分子同定 森 泰生
京大院・工
(2)
4 細胞容積センサーとして働く分子群の同定及び機能解析 川西 正祐
鈴鹿医療科学大・薬
(2)
5 ミツバチの社会性行動を担う新規温度受容センサーの生理機能の解析 門脇 辰彦
名古屋大院・生命農学
(2)
6 視床下部の摂食調節にかかわる生体分子センサーについての機能形態学的研究 塩田 清二
昭和大・医
(2)
7 視床下部におけるSIRT1のエネルギー代謝制御機構の解明 北村 忠弘
群馬大・生体調節研究所
(2)
8 レプチン過剰発現トランスジェニックマウス(LepTg)やメタボリックシンドローム病態を示す種々の遺伝子操作マウスにおけるOCT-1の発現解析 益崎 裕章
京大院・医
(1)
9 凍結割断法を用いた一次嗅覚路の解析 高見 茂
杏林大・保健
(2)
10 運動学習記憶に関連するシナプス微細形態の検索 永雄 総一
理化学研究所
(1)
11 シナプス後膜におけるグルタミン酸受容体のトラフィック制御機構 柚﨑 通介
慶應義塾大・医
(2)
12 GABAシグナリングにおける新奇分子PRIPの役割解明 平田 雅人
九州大院・歯
(2)
13 多光子顕微鏡を用いた嗅覚障害とその回復時における嗅球ニューロンのターンオーバーの可視化解析 澤本 和延
名古屋市立大院・医
(4)
14 歯髄幹細胞を用いた血管新生・歯髄再生 中島 美砂子
国立長寿医療センター研究所
(4)
15 トランスジェニック動物作製への凍結乾燥精子の利用 保地 眞一
信州大・繊維
(1)
16 SERCA2a遺伝子を導入したトランスジェニックラットの作製 高木 都
奈良県立医科大・医
(1)
17 CNR/プロトカドヘリン遺伝子ジーンターゲティングマウスの作製と機能解析 八木 健
大阪大院・生命機能
(1)
18 ラット精子幹細胞を用いた顕微授精 篠原 隆司
京大院・医
(1)
19 抗酸菌におけるZiehl-Neelsen染色の機序に関する位相差低温電子顕微鏡を用いた検討 山田 博之
結核予防会結核研究所
(3)
20 微小管の位相差電子顕微鏡と質量顕微鏡での比較観察 瀬藤 光利
浜松医科大・分子イメージング先端研究センター
(3)
21 シリコンベース膜タンパクバイオセンサー製作のための,タンパク質発現・精製・集積技術開発 宇理須 恒雄
分子科学研究所
(2)
22 TRPチャネルファミリーの味覚受容および情報伝達における役割について 二ノ宮 裕三
九州大院・歯
(2)
23 運動時の呼吸・循環応答と遅発性筋痛に関わる受容器におけるTRPV1とTRPA1の役割 水村 和枝
名古屋大・環境医学研究所
(2)
24 2光子FRET顕微鏡を用いた複雑機能を同時可視化する手法の開発と細胞死の分子メカニズムの解明 永井 健治
北海道大・電子科学研究所
(4)
25 2光子顕微鏡による免疫細胞動態制御の解析 木梨 達雄
関西医科大・附属生命医学研究所
(4)
26 ハイブリッド顕微鏡用環境制御セルの開発 箕田 弘喜
東京農工大・工
(3)
27 慢性疼痛モデル動物における大脳皮質体性感覚野ニューロンの可塑性 ―電気生理学的解析と2光子励起を用いた形態学的研究の融合― 吉村 恵
九州大院・医
(4)
28 2光子顕微鏡による新奇分子を介した開口放出制御の解明研究 兼松 隆
九州大院・歯
(4)
29 黒質網洋部GABA作動性ニューロンの代謝依存的活動調節機構 山田 勝也
弘前大院・医
(2)
30 脳領域特異的なコンディショナルなメタスチンノックアウトマウスの作製とその解析 前多 敬一郎
名古屋大院・生命農学
(1)


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