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細胞器官研究系


生体膜研究部門

平成19年6月着任予定


機能協関研究部門


細胞機能のすべては,細胞膜におけるチャネル(イオンチャネル,水チャネル)やトランスポータ(キャリア,ポンプ)の働きによって担われ,支えられている。私達は容積調節や吸収・分泌機能や環境情報受容などのように最も一般的で基本的な細胞活動のメカニズムを,チャネル,トランスポータ,レセプター,センサー,メッセンジャーなどの機能分子の働きとして細胞生理学的に解明し,それらの異常と疾病や細胞死との関係についても明らかにしようとしている。主たる研究課題は次の通りである。

(1)「細胞容積調節の分子メカニズムとその生理学的役割」:細胞は(異常浸透圧環境下においても)その容積を正常に維持する能力を持ち,このメカニズムには各種チャネルやトランスポータやレセプターの働きが関与している(図1)。これらの容積調節性膜機能分子,特に容積感受性クロライドチャネル,やそのシグナルの分子同定を行い,その活性メカニズムと生理学的役割を解明する。

(2)「アポトーシス,ネクローシス及び虚血性細胞死の誘導メカニズム」:容積調節能の破綻は細胞死(アポトーシスやネクローシス)にも深く関与する(図2)。これらの細胞死誘導メカニズムを分子レベルで解明し,その破綻防御の方策を探求する。特に,脳神経細胞や心筋細胞の虚血性細胞死の誘導メカニズムを生理学的に解明する。

(3)「バイオ分子センサーチャネルの分子メカニズムの解明」:イオンチャネルはイオン輸送や電気信号発生のみならず,環境因子に対するバイオ分子センサーとしての機能を果たし,他のチャネルやトランスポータ制御にも関与する多機能性蛋白である。アニオンチャネルやATPチャネルの容積センサー機能およびストレスセンサー機能の分子メカニズムを解明する。


Fig.1
図1:低浸透圧環境下での細胞容積調節(RVD:調節性容積減少)のメカニズムとVSOR Clチャネルの容積センサー機能
Fig.2
図2:細胞容積調節破綻とアポトーシス性及びネクローシス性細胞死(RVI:調節性容積増加,AVD:アポトーシス性容積減少,NVI:ネクローシス性容積増加,VSOR:容積感受性Cl-チャネル)
Fig.3
図3:心筋細胞におけるストレスセンサーATPチャネル


職  員

photo 教 授  岡 田 泰 伸  OKADA,Yasunobu
京都大学医学部卒,医学博士。京都大学医学部講師を経て平成4年9月から現職。平成19年4月より所長と併任。
専攻:分子細胞生理学,細胞死の生理学。
photo 助 教  樫 原 康 博  KASHIHARA,Yasuhiro
富山大学文理学部卒,九州大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士。昭和58年7月から現職。
専攻:神経生物学。
photo 助 教  清 水 貴 浩  SHIMIZU,Takahiro
富山医科薬科大学薬学部卒,同大学院薬学研究科修士課程修了,総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了,理学博士。生理学研究所非常勤研究員,日本学術振興会特別研究員を経て,平成14年7月から現職。
専攻:細胞生理学。
photo 助 教  高 橋 信 之  TAKAHASHI,Nobuyuki
京都大学農学部卒,同大学院医学研究科博士課程学修退学。医学博士。旧通産省旧産業技術融合領域研究所非常勤研究員,生物系特定産業技術研究推進機構派遣研究員を経て,平成14年12月から現職。
専攻:細胞生物学。
photo 特任助教  沼 田 朋 大  NUMATA, Tomohiro
東京学芸大学教育学部卒,同大学院教育学研究科修士課程修了,総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了,理学博士。日本学術振興会特別研究員を経て平成19年4月から現職。
専攻:細胞生理学。
photo 研究員  浦 本 裕 美  URAMOTO,Hiromi
日本女子大学家政学部卒,総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程単位取得退学。科学技術振興機構研究員を経て,平成16年4月から現職。
専攻:細胞生理学。
photo 研究員  LEE, Elbert
ノースウエスタン大学卒,総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了,理学博士。平成17年10月から現職。
専攻:細胞生理学。
photo 日本学術振興会外国人特別研究員 LIU, Hongtao
中国医科大学医学部卒,総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程修了,理学博士。平成18年4月から現職。
専攻:細胞生理学。


能動輸送研究部門(客員研究部門)

現在選考中


細胞生理研究部門

岡崎統合バイオサイエンスセンター
生命環境研究領域
兼務


分子細胞生物学的,生化学的,発生工学的,電気生理学的手法を用いてTRPチャネルを中心として温度受容・痛み刺激受容・味覚受容の分子機構の解明を行っている。また,哺乳動物細胞での細胞接着と細胞運動に関わる情報伝達経路,イオンチャネルの解析を行っている。

  1. 温度受容の分子機構の解明に関する研究:既知の温度受容体の異所性発現系を用いた解析,変異体等を用いた構造機能解析,感覚神経細胞等を用いた電気生理学的な機能解析,組織での発現解析,遺伝子欠損マウスを用いた行動解析を通して温度受容機構の全容解明を目指している。また,体温近傍の温度でのイオンチャネル活性化の生理学的意義の検討も進めている。さらに,新規温度受容体の探索も進めている。

  2. 痛み刺激受容の分子機構の解明に関する研究:主に感覚神経細胞,異所性発現系を用いて感覚神経終末における侵害刺激受容の分子機構を明らかにする。この研究には,遺伝子欠損マウスの行動薬理学的解析も行う。

  3. 細胞接着と細胞運動に関わる情報伝達機構の解明に関する研究:哺乳動物細胞でのRhoファミリー蛋白質の下流の細胞接着・運動に関わる情報伝達経路の解析を分子細胞生物学的,生化学的手法を用いて進めている。我々が見いだした新規情報伝達物質DIP/WISHの遺伝子改変動物の解析を上皮細胞,血球細胞,神経細胞で行っている。

Fig.2


[哺乳類の温度感受性TRPチャネルの活性化温度閾値(右)と温度活性化電流記録]
カプサイシン受容体TRPV1は約43度以上,TRPV2は約52度以上,TRPV4は約36度以上,メントール受容体TRPM8は約28度以下で活性化される。

Fig.2


[細胞運動におけるDIP/WISHの役割]
上段は,EGF刺激による線維芽細胞の経時的変化を示す。正常細胞(☆)はダイナミックに運動しているが,DIP/WISH (mDia and N-WASP Interacting Protein)のdominant negative体を発現させた細胞(矢頭)は全く動かない。矢印はfrontのmembrane rafflingを示す。下段は,細胞運動時におけるDIPの役割を模式化したものである。



職  員

photo 教 授  富 永 真 琴(生理学研究所兼務)   TOMINAGA, Makoto
愛媛大学医学部卒,京都大学大学院医学研究科博士課程修了,博士(医学)。生理学研究所助手,カリフォルニア大学サンフランシスコ校博士研究員,筑波大学講師,三重大学教授を経て平成16年5月から現職。
専攻:分子細胞生理学。
photo 准教授  福 見 知 子(生理学研究所より出向)   FUKUMI, Tomoko
愛媛大学医学部卒。三井記念病院内科研修医,京都大学医学部内分泌内科・医員,研究生を経て,学位取得(医学博士,京都大学)。生理学研究所助手,カリフォルニア大学サンフランシスコ校博士研究員,獨協医科大学助教授,三重大学講師を経て平成16年6月から現職。
専攻:分子細胞生物学,生化学。
photo 助 教  柴 崎 貢 志  SHIBASAKI, Koji
宇都宮大学農学部卒,九州大学大学院農学研究科修了,総合研究大学院大学生命科学研究科修了,博士(理学),米国ロチェスター大学博士研究員を経て,平成16年9月から現職。
専攻:分子神経生物学。
photo 助教(特任)  稲 田  仁  INADA, Hitoshi
九州大学理学部卒,九州大学大学院理学研究科修了,博士(理学)。九州大学博士研究員,名古屋大学博士研究員,岡崎統合バイオサイエンスセンター非常勤研究員を経て平成18年4月から現職。
専攻:分子神経生物学,行動遺伝学。
photo 日本学術振興会特別研究員   曽我部 隆 彰   SOKABE,Takaaki
姫路工業大学(現兵庫県立大学)理学部卒,東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(医学)。東京大学学術研究支援員,生理学研究所非常勤研究員を経て平成19年4月から現職。
専攻:分子細胞生物学。
photo 研究員  兼 子 佳 子(生理学研究所より出向)    KANEKO, Keiko
日本大学生物資源科学部卒,横浜市立大学大学院医学研究科修了,博士(医学)。平成19年4月から現職。
専攻:生化学。
photo 研究員  松 井   誠   MATSUI, Makoto
徳島大学工学部卒,徳島大学大学院人間自然環境研究科修了,総合研究大学院大学生命化学研究科修了,博士(理学)。鶴見大学非常勤研究員を経て,平成19年4月から現職。
専攻:分子細胞生物学。

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