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行動・代謝分子解析センター


遺伝子を改変したラット・マウス,もしくはストレス環境下で飼育したラット・マウスの行動様式を規格化された多種類のパラメータを用いて解析すると同時に,生きたまま神経系の活動および代謝活性をモニターする。また,センターが管理する施設設備を研究所の内外の研究者の利用に供する。


センター長 (併任)

池中 一裕 教 授  池 中 一 裕  IKENAKA, Kazuhiro
大阪大学理学部卒,同大学院理学研究科修了,理学博士。大阪大学蛋白質研究所助手,助教授を経て,平成4年11月から生理研教授。
専攻:分子神経生物学。

遺伝子改変動物作製室


ポストゲノム時代の到来により,脳機能のような複雑な生物反応機構の解明に科学がどこまで迫れるかが問われることになった。よって,外科的手術が容易で,脳地図の解析が進み,かつ心理生理学的解析にも汎用されているマウス・ラットが,今後ますます分子レベルの研究に利用されてくるだろう。遺伝子改変動物作製室では,遺伝子改変動物(マウス,ラット)の作製技術を提供しつつ,内在性の遺伝子を狙って破壊したノックアウトラット作製技術 (マウス以外では作製不可能) の開発,外来遺伝子を導入したトランスジェニックラット作製の効率改善,ならびに作製したノックアウトマウスやトランスジェニックマウス・ラットを利用した大脳皮質第一次視覚野に存在するカラム構造の形成メカニズム・発達メカニズムの解明を目的として,以下の研究を行っている。

(1)クローンラット作製技術の確立
核移植 (クローン作製) 技術を応用することにより,体細胞等の細胞からキメラを介することなくノックアウトマウスが作製できると証明された。しかしラットの卵母細胞は第二減数分裂中期で減数分裂を停止していないことがクローン個体の作製を困難にしている。われわれはラット卵母細胞における細胞分裂停止因子(Cytostatic factor:CSF)の正体とその役割を追究しており,得られた知見を元にクローン作製に最も適したラット系統を選抜し,クローン個体の作製方法を確立しようとしている。

(2)トランスジェニックラット作製の効率化
外来DNAを前核期卵子に顕微注入する方法,および精子に外来DNAを付着させて顕微授精する方法のいずれでも,トランスジェニック動物が作出される割合は著しく低い。外来DNAの導入卵子は細胞周期がG1ステージに入るたびに発生遅延・阻害を受けることから,この現象の原因を追究しつつその回避策を模索している。発生阻害を受けずに分娩に至る個体数を増やすことを狙い,結果的に総処理卵子に対するトランスジェニックラットの作製効率を改善しようとしている。

(3)大脳皮質第一次視覚野に存在するカラム構造の形成メカニズム・発達メカニズムの解明
大脳皮質第一次視覚野には,カラム構造をした機能ユニットが多く存在する。中でも,遠近感の知覚に重要と考えられる眼優位カラムは,発生研究および可塑性研究の一番の対象である。この眼優位カラム構造は,出生前後の発生期に大まかに形成され,その後の発達期,外部からの視覚入力によって機能的なカラム構造へと可塑的に構築される。しかしながら,この過程における詳細な分子メカニズム・細胞メカニズムは明らかにされていない。当教室では,発生期から発達期にかけて,このカラム構造に特異的に発現している因子群の単離に成功した。ノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスのシステムを利用して,この因子群の機能解析を行うことで,発生期から発達期における,眼優位カラム形成を司る分子メカニズムを明らかにする。さらに,この因子群のプロモーター下に蛍光タンパクを発現させたトランスジェニックマウスを作製し,発生期から発達期にかけて,この動物の眼優位カラム構築の変遷を追跡することで,眼優位カラム形成の細胞メカニズムを探る。


ラットにおける生殖工学技術
図1 図2
図1. ラットの核移植
連続核移植によるクローン胚の作製;ラット体細胞核を除核未受精卵子に導入後,薬剤処理により活性化させる。形成した疑似前核と除核受精卵をこのように電極ではさみ,直流パルスをかけて融合させる。
図2. ラットの顕微授精
卵細胞質内精子顕微注入法による受精卵の作製;排卵後のラット裸化未受精卵子に釣り針状の形をした精子の頭部1個だけをピエゾマイクロマニピュレーターを用いて注入する。
眼優位カラム
図3
図3. 眼優位カラムの形成プロセス
眼優位カラムは,出生前後の発生期,大まかに形成され,その後の発達期,外部からの視覚入力によって機能的なカラム構造となる。


職  員

平林 真澄 准教授  平 林 真 澄  HIRABAYASHI,Masumi
名古屋保健衛生大学(現:藤田保健衛生大学)衛生学部卒,農学博士。雪印乳業株式会社生物科学研究所研究員,(株)ワイエスニューテクノロジー研究所発生生物学研究室室長,生理学研究所客員助教授を経て,平成14年4月から現職。
専攻:実験動物学。
冨田 江一 助 教   冨 田 江 一  TOMITA, Koichi
三重大学医学部卒,京都大学大学院医学研究科修了,医学博士。学術振興会特別研究員,京都大学ウイルス研究所助手,ドイツMax-Planck神経生物学研究所非常勤研究員を経て,平成18年7月より現職。
専攻:神経科学。
加藤 めぐみ 研究員  加 藤 めぐみ  KATO, Megumi
信州大学繊維学部卒,同大学大学院応用生物科学科修士課程修了,工学博士。生理学研究所専門研究職員を経て平成19年4月から現職。
専攻:生殖工学。

行動様式解析室(客員研究部門)


2007年4月より立ち上がり,宮川先生が当研究部門の客員教授に就任した。准教授には動物実験センターの木村が併任する。昨年度は空気調節装置の整備および行動実験機器の購入にあたった。マウス・ラットの各種行動実験ができるように,本年度は準備に当たる。


職  員

宮川 剛 教 授  宮 川   剛  Miyakawa, Tsuyoshi
東京大学文学部心理学科卒,同大学大学院人文科学研究科修士課程心理学専攻修了,同大学大学院人文社会系研究科博士課程修了,博士(心理学)。米国国立精神衛生研究所 (NIMH),バンダービルト大学,マサチューセッツ工科大学,京都大学医学研究科助教授を経て,現在,同大学医学研究科生体遺伝子機能研究チームチームリーダー,藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授,平成19年9月から現職を併任。
木村 透 准教授(併任)  木 村   透(生理学研究所兼務)  KIMURA, Tohru
東京農工大学農学研究科修士課程修了,博士(獣医学),日本農産工業(株),埼玉第一製薬(株)を経て,平成17年6月から現職。
専攻:実験動物学,獣医皮膚科学。

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