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脳機能計測センター形態情報解析室【概要】 超高圧電子顕微鏡用広視野高解像度対物レンズの結像特性有井達夫 医学生物学用としての超高圧電子顕微鏡(H-1250M)は,出来るだけ低倍(×1,000)において,広い視野を,高解像度に撮影できることが必要である。導入当初は,高分解能用を兼用した対物レンズとして導入されており,1,000倍において使用できる対物絞りに限界があり,また観察視野がフィルムの大きさに比較して制限されていた。そこでより広い視野を高コントラストで撮影することが出来るように低倍対策用対物レンズポールピース(fobj = 5.0 mm, CC = 3.9 mm, CS = 5.5 mm)を試作し,1994年6月に設置した。これに合わせて結像系内の光軸上の固定絞りの径を変更している。これらの結果,1,000倍の倍率において,導入時には,対物絞り直径50μmを用いても試料観察視野直径〜65μmであったが,変更後は,視野直径〜78μm内の領域を,対物絞り直径10μmを用いても,観察可能と改善された。 ラット小脳の生後発達におけるエンドセリン受容体の発現と局在古家園子,尾崎 毅 強力な血管作働性物質として発見されたエンドセリンは発生の過程において,種々の細胞の増殖や分化を促進することが知られている。エンドセリン受容体にはETAとETBが知られており,小脳にはETBが局在していることがin situ hybridization法にて明らかにされている。そこで,正常ラットおよびETB突然変異ラットについて小脳の生後発達過程におけるエンドセリン受容体の発現と局在を,抗ETB抗体,抗ETA抗体を用いた電顕免疫組織化学法にて観察した。 生体情報処理室【概要】 樹状突起活動電位の伝播調節メカニズムの解析坪川 宏 樹状突起は,種々のシナプス入力を統合してニューロンの出力を決定するためのADコンバーターとして,情報処理上の重要な役割を担っている。シナプス統合のメカニズムは脳内のニューロンにより異なるが,大脳皮質や海馬の錐体細胞では,細胞体側より逆行性に伝播してくる樹状突起活動電位の寄与が大きいことが近年明らかになってきている。樹状突起における活動電位の特性は,樹状突起に存在する種々の電位依存性イオンチャネルやトランスポーターの活性により精密に調節され,さらにこれらの機能分子は細胞内のシグナル伝達系により直接・間接にコントロールされていると考えられる。この調節機構の詳細を明らかにするため,イオン・イメージングをはじめとした光学的手法と,パッチクランプ法等の電気生理学的手法を併用し,海馬スライス標本上の錐体細胞を用いて,樹状突起活動電位の解析を行っている。これまで,この活動電位とそれに伴う細胞内Ca2+の増加がGタンパクを介する細胞内情報伝達系の活性化により調節されることを報告してきた。今年は,細胞内Ca2+の増加によるCaMKIIの活性化が樹状突起活動電位の伝播を長時間促進しうること,またこの効果は3量体GタンパクGqのαサブユニット欠損マウスでも見られることを報告した(Tsubokawa H et al., J Neurosci, 20 : 4878-84.)。 細胞内シグナル伝達系の活性とニューロン活動との時間的・空間的関係の解析坪川 宏,高木佐知子 細胞内シグナル伝達系の活性変化は,シナプス伝達の長期増強や長期抑圧といった可塑的変化に重要な役割を果たし,また一方では細胞死を導く要因にもなりうることが知られている。ニューロン機能におけるシグナル伝達の役割をより明確にして行くために,タンパク質リン酸化酵素をはじめとした酵素群の動態と種々のニューロン活動との時間的・空間的関係を詳細に解析することは必要不可欠と考えられる。本研究は,中枢ニューロンの一つのモデルとして海馬スライス標本上の錐体細胞を用い,3量体Gタンパク質Gq及びG11のカスケードにつながるタンパク質リン酸化酵素,PKCの活性変化を可視化し,ニューロン活動やそれに伴う細胞内Ca2+濃度変化とPKCの活性変化との時間・空間的関係を明らかにすることを目指している。今年は,PKCの薬理学的活性化に伴う細胞内移動を,PKC結合性蛍光色素を単一ニューロン内へ注入して検出することを試みた(Tsubokawa H, Jpn. J. Physiol. 50: S118, Tsubokawa H, Takagi S, Soc. Neurosci. Abs. 26: 876)。 中枢ニューロンの容積調節と興奮性調節の機能的カップリングの解析高木佐知子,坪川 宏 脳細胞では,てんかん発作,虚血侵襲の急性期などにswelling,blebなどと呼ばれる細胞膨張が見られる。また,海馬CA1野における遅発性細胞死やアポートシスの過程では持続的な容積減少(shrink)が観察される。しかしながら,これらの容積変化が神経障害の過程でどのような意味を持つのか不明である。本研究では,種々のニューロン活動の変化と容積変化との関係を解析し,興奮性調節と容積調節の両メカニズムに関与する分子の機能連関を明らかにすると共に,それらの破綻と病態との関連を明らかにすることを目指している。 機能情報解析室【概要】 静電的相互作用で駆動されるアミロイド誘起性蛋白質凝集機構今野 卓 アミロイド凝集体と他の蛋白質分子との相互作用は,アミロイド関連病理機構の解明に不可欠である。その相互作用の物理化学的性状の一般的解明に寄与するため,細胞毒性をもつアルツハイマー病関連ペプチドがつくるアミロイドと多種類の可溶性蛋白質との間の相互作用を検討した。その結果,このアミロイドは,広範囲の蛋白質種に対して破壊的に働き,凝集・沈殿を引き起こすことが観察された。さらに,変異体ペプチドを使った実験などから,その現象を引き起こす相互作用が,静電的力で駆動されていることも示された。総括として,アミロイドと蛋白質間の相互作用とそれに続く蛋白質構造の崩壊についての一般的スキームを提案した。(Biochemistry (2001) 40, 2148-2154に発表) 意欲に関係する脳活動の研究逵本 徹 「意欲」の神経機序は不明な点が多い。報酬を得るために運動課題を遂行するサルの意欲は,客観的には測定不可能であるが,様々な要因で変動することが推察される。例えば課題を継続して行うと,報酬を獲得していくのに伴って,課題遂行への意欲は減退していくと考えられる。また,報酬がより望ましいものに変更されれば,意欲は増加するであろう。認知運動課題遂行中のサルの前頭前野・海馬・前帯状野の脳血流量が,想定される意欲の変化と一致した変動を示すことが陽電子断層撮影法(PET)を用いた実験で明らかになった。大脳辺縁系と前頭前野の「意欲」への関与を示唆する知見と考えられる。この脳活動の詳細を調べるため,大脳皮質電位記録法とPETによる解析を進めている。
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