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脳機能計測センター形態情報解析室【概要】 超高圧電子顕微鏡(H-1250M)による立体写真の配置に関して有井達夫 医学生物学用としての超高圧電子顕微鏡(H-1250M)は,出来るだけ低倍(×1,000)において,厚い試料の広い視野を,高解像度に撮影できることが重要である。1996年に実施した低倍を重視した対物レンズの改造に伴い,現在,傾斜軸は,フィルムの長辺に対して約10度傾斜しているとしたが,今回検討したところ1kから45kの低倍においてZ補正の後には約5度であった。このときに,超高圧電子顕微鏡(H-1250M)で撮影したフィルムの立体写真を,観察するにあたっては,図1のようにフィルムを配置し平行視することによって,電子顕微鏡のサイドエントリー傾斜台の試料位置に設置された試料を,平行視の条件で,直接蛍光板側から試料を観察したときに見える像となる。このとき,右目用の像は,+θ ° (θ>0)で撮影したもの,左目用の像は-θ ° (θ>0)で撮影したものである。図1のように,約5度傾斜させて配置すれば,最適な立体視の条件となる。また左右の写真において,中央近くの対応点を重ね合わせ全ての他の対応点の間を結ぶときの(視差を検出する)方向と垂直に傾斜軸が存在することになる。 図1 HVEM(H-1250M) による立体写真(平行視)の配置 ラット膵臓導管におけるAQP1の局在古家 園子 【目的】 生体情報処理室【概要】 樹状突起活動電位の伝播調節メカニズムの解析坪川 宏 樹状突起は,種々のシナプス入力を統合してニューロンの出力を決定するためのADコンバーターとして,情報処理上の重要な役割を担っている。シナプス統合のメカニズムは脳内のニューロンにより異なるが,大脳皮質や海馬の錐体細胞では,細胞体側より逆行性に伝播してくる樹状突起活動電位の寄与が大きいことが近年明らかになってきている。樹状突起における活動電位の特性は,樹状突起に存在する種々の電位依存性イオンチャネルやトランスポーターの活性により精密に調節され,さらにこれらの機能分子は細胞内のシグナル伝達系により直接・間接にコントロールされていると考えられる。この調節機構の詳細を明らかにするため,イオン・イメージングをはじめとした光学的手法と,パッチクランプ法等の電気生理学的手法を併用し,海馬スライス標本上の錐体細胞を用いて,樹状突起活動電位の解析を行っている。これまで,この活動電位の伝播とそれに伴う樹状突起内Ca2+の増加がGタンパクやCaMKIIを介する細胞内シグナル伝達系の活性化により促進されることを報告してきた。今年は,同様の海馬CA1領域において,活動電位の伝播を抑制する方向に働くシグナル伝達系の探索を行った。その結果,ソマトスタチン受容体を介する系が有力な候補の一つである証拠を得た。 細胞内シグナル伝達系の活性とニューロン活動との時間的・空間的関係の解析坪川 宏, 高木 佐知子 細胞内シグナル伝達系の活性変化は,シナプス伝達の長期増強や長期抑圧といった可塑的変化に重要な役割を果たし,また一方では細胞死を導く要因にもなりうることが知られている。ニューロン機能におけるシグナル伝達の役割をより明確にして行くために,タンパク質リン酸化酵素をはじめとした酵素群の動態と種々のニューロン活動との時間的・空間的関係を詳細に解析することは必要不可欠と考えられる。本研究は,中枢ニューロンの一つのモデルとして海馬スライス標本上の錐体細胞を用い,3量体Gタンパク質Gq及びG11のカスケードにつながるタンパク質リン酸化酵素,PKCの活性変化を可視化し,ニューロン活動やそれに伴う細胞内Ca2+濃度変化とPKCの活性変化との時間・空間的関係を明らかにすることを目指している。今年は,ニューロン活動に伴うPKCの細胞内移動をPKC結合性蛍光色素により検出し,その時間経過や移動パターンを定量的に解析した。 中枢ニューロンの容積調節と興奮性調節の機能的カップリングの解析高木 佐知子, 坪川 宏 脳細胞では,てんかん発作,虚血侵襲の急性期などにswelling,blebなどと呼ばれる細胞膨張が見られる。また,海馬CA1野における遅発性細胞死やアポートシスの過程では持続的な容積減少(shrink)が観察される。しかしながら,これらの容積変化が神経障害の過程でどのような意味を持つのか不明である。本研究では,種々のニューロン活動の変化と容積変化との関係を解析し,興奮性調節と容積調節の両メカニズムに関与する分子の機能連関を明らかにすると共に,それらの破綻と病態との関連を明らかにすることを目指している。海馬など細胞が高密度に存在する脳内部位では,細胞が容積変化を起こすと,一定体積あたりの細胞と細胞間隙の占有パターンが変わり,それに応じて近赤外光の透過率が変化することが知られている。この性質を利用して,海馬スライス標本のニューロンから電気生理学的記録を行うと共に,内因性光学シグナルのイメージングを行ない,様々なストレス負荷で起こる興奮性変化と容積異常の時間的・空間的特性を解析している。今年は,シナプス活動によって海馬CA1野ニューロンに一過性の容積増加が生じること,この容積増加にはGABA性の抑制性入力が寄与していることを報告した(Takagi S, Obata K, Tsubokawa H, Soc. Neurosci Abs 27: 714, Takagi S, Obata K, Tsubokawa H, Jpn J Physiol51: S192)。 機能情報解析室【概要】 意欲に関係する脳活動の研究逵本 徹 「意欲」の神経機序は不明な点が多い。報酬を得るために運動課題を遂行するサルの意欲は,客観的には測定不可能であるが,様々な要因で変動することが推察される。例えば課題を継続して行うと,報酬を獲得していくのに伴って,課題遂行への意欲は減退していくと考えられる。また,報酬がより望ましいものに変更されれば,意欲は増加するであろう。認知運動課題遂行中のサルの前頭前野・海馬・前帯状野の脳血流量が,想定される意欲の変化と一致した変動を示すことが陽電子断層撮影法(PET)を用いた実験で明らかになった。大脳辺縁系と前頭前野の「意欲」への関与を示唆する知見と考えられる。この脳活動の詳細を調べるため,大脳皮質フィールド電位記録法とPETによる解析を進めている。
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