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動物実験センター

 

【概要】

<山手地区動物実験センター棟>

山手地区に建設が進められていた統合バイオサイエンスセンター棟の1期工事と2期工事は平成14年3月末に予定通り竣工し機構に引き渡された。山手地区動物センター棟はRIセンターと棟続きで鉄骨地上4階建て,延べ床面積2,312m2で山手地区の建物群の最南端に建設された。建物の竣工と同時にセンターでは,飼育室,実験室の整備を開始した。山手地区動物センター棟の特徴は精度の高い動物実験を行うために,陸生動物の飼育室の主要部分をバリアー区域としてSPFマウスとSPFラット用としつつ,魚類や両生類,昆虫などの多様な動物種の飼育にも対応できるようにしたことである。

山手地区へ移転予定の研究部門の引っ越しは建物の竣工に引き続いて早速開始されることになったが動物センターではこれらの部門の便宜をはかるため,動物センター棟の稼働開始を8月1日と設定した。かくして飼育室の空調,衛生設備,入退室管理システムの点検や大型滅菌器の洗浄室への設置などが稼働開始に向けて急ピッチですすめられることとなった。

6月17日には遠山文部科学大臣,岡崎市長,地域住民その他建物の建設に関わった人々を迎えて竣工披露式が行われた。当初心配された設備については所長会議をはじめとする関係各方面の理解を戴いて,稼働開始に必要な機器の大部分を用意するところまでこぎ着けた。

5月中旬には特注したケージウオッシャーの据え付けも終わり,いよいよ性能をテストする段階に入った。テストは試運転をかねてA地区動物棟で用いられているラット,マウス用ケージを約3週間にわたって毎日山手地区まで運搬して洗浄機にかけて行なった。A地区においては実働中のケージであるため少しでもトラブルがあればA地区における作業全体に支障を来すおそれがあったが,きわめて順調に移行することが出来,このオペレーションは大成功であった。高圧蒸気滅菌器や給水装置その他のチェックを終え,7月22日からいよいよ最終段階のバリアー区域内部のホルマリン薫蒸作業に入った。そして,32名の受講者を得て計画通り7月30日には第1回,9月13日に第2回目の利用者講習会が開催され,施設は稼働を開始した。

 

<マウス初期胚凍結事業>

平成13年度より開始したマウス初期胚の凍結事業は,山手地区への移転が予定されている部門のものを優先して,のべ53件で実施された。そして山手地区動物センター棟の稼働開始後は移室分のマウス胚の融解,移植作業も開始された。A地区から山手地区への移転計画は平成14年度以降にも予定されているので,マウス初期胚凍結は引き続き移転予定部門のものを優先的に行う必要があり関係者の理解と協力を期待したい。

 

<情報公開>

 情報公開に関する法律が施行されて2年目となるが今年度も動物実験計画書の情報公開請求があった。請求は動物愛護団体を名乗る個人からのもので,イヌ,ネコ,サルを用いた実験計画書と納品書など4項目にわたるもので,個人及び法人名など不利益を被るおそれのある第三者に関する部分を除いて全面開示された。これに対して不服申し立てが行われたが,内閣府情報公開審査会に諮問したところ,「機構が一部不開示としたことは妥当」との答申があり,この件については落着した。

動物実験センターでは,実験に使用する動物の入手,搬出に関して従来より動物種ごとに取り扱い要領を定めており何の問題もないところであったが,第三者にもわかりやすくするため,ホームページ上に「実験動物の搬入出管理について」を掲載した。

 

<洗浄室床の改修>

A地区動物センター棟は建築以来25年を経過し,各所に傷みが目立ってきたが,洗浄室の床は特にひどく,塗装の剥離部分が年々拡大していた。洗浄室は年間を通じて1日も休むことなく作業が行われるため,これまで手の着けようがなかったが,山手地区動物センター棟が竣工したことにより,洗浄機の据え付けの終わる5月中旬から稼働体制に入る6月中旬までの1ヶ月間だけ,従来の洗浄業務を山手地区の洗浄室で行うことが可能になった。そこでこの期間を利用して洗浄室の床の全面改修を行うこととし,作業者,ユーザーの協力を得て実行に移された。1歩誤れば大混乱を来すおそれがあったが大きなトラブルもなく予定通り作業を終えることが出来た。

 

<独立行政法人化にむけて>

平成15年度に予定されている国立大学の独立行政法人化によりこれまで人事院所轄であった事項の多くに労働安全衛生が適用されることとなり,動物実験施設においても様々な問題点が指摘されている。特に,大型設備の大部分が厚生労働省所轄となるため,届け出に必要な関係書類の整理と設置基準の見直しをすすめている。また平成14年度よりエチレンオキシドガスが特定有害化学物質に指定されたことからA地区動物センター棟のガスの貯蔵場所の変更と配管設備の改修が必要となったため緊急に実施した。

 

<今後の課題>

 山手地区動物センター棟の稼働に対して,センター職員の定数に増加はなく,所内措置による技官1名と部門と兼任の事務補佐員1名の増員にとどまった。このため,センター職員は山手地区とA地区を掛け持ちせざるを得ないこととなった。しかしながらA地区においては大部分の動物がコンベンショナル動物であり,微生物学的コントロールの必要な山手地区における業務を同一人が並行して行うことは時間的にも管理上からも実情に合わず,将来的にはそれぞれ専任とすべきであろう。動物センターの専任教官がA地区E地区併せて1名という体制にも無理がある。E地区動物センター棟が本格的な稼働をはじめる平成16年度以降にはA・E両地区に専任教官が常駐することが望ましい。科学的かつ倫理的な動物実験のために動物実験センターが果たすべき役割は今後ますます大きくなると思われるが,そのためには組織体制の整備は欠かすことが出来ない。

 


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