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動物実験センター

【概要】

 <山手地区動物実験センター棟の稼働>
 運用開始2年目を迎えて山手地区山手地区動物センター棟の利用者数は一気に上昇することとなった。このため利用開始早々にして一部の施設の不備を手直しする必要が出てきた。山手地区動物センター棟は精度の高い動物実験を行うために,陸生動物の飼育室の主要部分がバリアー区域となっているため一旦実験室に持ち込んだ動物の飼育が出来ないと言う問題があり,利用者の要望を容れてバリアー外に処置動物の一時的飼育室を用意することとした。また,水生動物室に遺伝子改変魚類の飼育水槽を設置したいとの希望が出され,水生動物用の物理的封じ込め対策を施した水槽を設置した。
 山手地区動物センター棟における設備については初期故障が散発した。山手地区に初めて導入したケージ自動洗浄乾燥機は蒸気配管からの蒸気漏れ,コントローラの焼損が起きた。また,廃蒸気による排気口の変形などのトラブルや,蒸気発生器からの蒸気漏れ,EOG検知器の誤作動などを経験したが大事に至ることはなかった。

 <明大寺地区動物センター棟>
 独立行政法人化を控えて,明大寺地区動物センター棟においては各種の設備の労働安全衛生法への対応が必要になり,ボイラー,オートクレーブ,EOG滅菌器等についてそれぞれ点検,整備を行った。また労働安全衛生コンサルタントの指導を受けて標識やドラフトの設置など作業環境の改善を行った。このほか,動物センターにおいてはエーテルやEOGなどの特定化学物質や危険物,圧力容器など取扱者に資格の必要な業務が多いため,職員の資格の取得に努めた。ちなみに現在までに取得した資格はのべ14件にも上っている。
 このほか,陸生動物室においては老朽化により生じたボイラーの故障が2件,新設したEOG滅菌器用電磁弁の動作不良1件,空調用チラーのトラブル1件,自動ケージ洗浄機の蒸気漏れ1件,水生動物室においては加熱冷却ユニット故障が4件あった。

 <マウス初期胚凍結事業>
 平成13年度より開始したマウス初期胚の凍結事業は,前年度に引き続いて山手地区への移転が予定されている部門のもの26件,クリーンアップを目的とするもの12件,保存を目的とするもの2件を行った。遺伝子改変マウスの利用も増えており,平成15年度は国内からの導入43件,海外からの導入14件,国内への搬出39件,海外への搬出1件となっているがこのうち約半数はクリーンアップを必要とするものであった。なお,年4回の山手地区SPF飼育室における微生物モニタリング検査結果はこれまですべて陰性であり順調に経過している。

 <情報公開>
 情報公開法の施行以来,動物実験計画書の情報公開請求が全国の国立大学に対して行われているが,岡崎国立共同研究機構に対しても2件の請求があった。請求はネコに関する実験計画書とその入手先,マカクザルバイオリソースプロジェクトに関するもので,前年度の内閣府情報公開審査会の「機構が一部不開示としたことは妥当」との答申を受けて,不利益を被るおそれのある第三者に関する部分を除いて全面開示された。実験に使用する動物の入手,搬出に関しては従来より動物種ごとに取り扱い要領を定めており問題となるような事例は皆無である。

 <明大寺地区陸生動物室のSPF化構想>
 明大寺地区動物センター棟は建築以来25年を経過し,設備の老朽化とともに飼育動物の種類や利用方法が当初の予想を超えて様々な問題が生じてきている。とりわけ近年有用な実験手段として多用される遺伝子改変動物の施設間における授受に際しては微生物学的な品質が問われるSPF飼育室の整備が望まれている。現在,統合バイオサイエンスセンター棟の竣工により返還された陸生動物室の地階実験室部分を中心にマウス,ラットのSPF飼育室へ改修するべく検討しているところである。

 <今後の課題>
 統合バイオサイエンスセンターが稼働をはじめたことにより,山手地区動物センター棟における飼育室の稼働率も上昇し業務量も増えているがセンター職員の定数に増減はみられない。このためセンターでは職員の配置換えを行って対応しているが次のような問題がある。第1に,コンベンショナル動物が中心の明大寺地区と微生物学的コントロールの必要な山手地区における業務を同一人が並行して行うことは時間的にも管理上からも実情に合わず,将来的にはそれぞれ専任とすべきであり,技術職員の適切な配置が望まれる。第2に,動物実験に対する技術的サポートや施設の微生物学的管理のためにはどうしても複数の実験動物の専門家の配置が必要である。山手地区動物センター棟が本格的な稼働をはじめる平成16年度以降には山手・明大寺両地区それぞれに専任教員が常駐することが望ましい。科学的で倫理的な動物実験と同時にユーザーへのサービスを保証するためには動物実験センターの組織体制の見直しと構築が望まれるところである。

 


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