生理学研究所年報 第26巻 | |
研究活動報告 | ![]() ![]() |
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技術課大庭明生 1.概要今年度の人事は,平成16年度4月に分子生理研究系技術係・大河原浩係長を研究施設技術班長に昇任させ,野村博美,高橋知子を技術職員として採用し,生体情報研究系,動物実験センターに配置した。5月に小木曽昇技術主任の名古屋大学医学部動物実験施設への転出があり,窪田美津子を技術職員として採用し,動物実験センターに配置した。9月に育児休業にあった神谷絵美技術職員の職場復帰があった。それに伴い代替技術職員鈴木恵の契約終了があった。12月に高橋知子技術職員の退職があった。 第3期技術部会の活動を引き続き行い,非侵襲技術部会の活動報告を『非侵襲計測の基礎−MEG・fMRI・PET−』としてまとめた。第4期技術部会立ち上げの準備として,第6回技術課セミナー(趣旨:今後の研究および研究体制の動向,研究を支える技術,その技術の今後の方向性と重要性,そのなかで技術職員の負うべき責任を基本テ−マに,講演を研究者に依頼し,課のあるべき方向と今後の研究ならびに技術動向を探る)を井本敬二教授, 平林真澄,瀬藤光利助教授,関 和彦,神作憲司助手を講師に行った。 課の研究活動への貢献を一層進めるため下記の事業を本年度も引き続き実施した。 〈1〉生理科学実験技術トレーニングコースでの技術指導 電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに,電気生理実験に有用な「サウンドモニター回路」とサウンドモニター回路動作用「直流定電圧電源」,「アクリル製バスチェンバー」の作製コース『生理学実験のための電気回路・機械工作』を担当し,5人の若手研究者の技術指導に当たった。 〈2〉科学研究費補助金(奨励研究)申請の推進 業務を展開,推進していくための問題意識の養成,その解決のための計画および方法の企画能力の養成,さらにはその表現力と説明力の養成を通じて,業務上の技術力の総合的な向上を図ることを目的に標記の申請を行い,下記の7課題の採択を得た。 〈3〉奨励研究採択課題技術シンポジウムの開催 時代要請に対応した技術認識と向上に立った技術職員の業務の社会的開示を推進するために奨励研究採択者による第5回の報告会を14演題で行った。 〈4〉成茂神経科学研究助成基金の申請の推進 課の自立的運営のためには独自の運営資金の確保が重要な課題である。今回戸川森雄技術主任を代表者にして奨励研究採択課題技術シンポジウムの開催経費を標記の基金に申請し,採択を得た。 〈5〉放送大学利用による専門技術研修の受講 研究の高度化と多様化の進むなかで技術職員の研修は重要な課題である。今回研修科目として『ゲノム生物学』と『光電子技術とIT社会』を選び,5名が受講した。 〈6〉生理学技術研究会の開催 第27回を基礎生物学研究所・技術課と合同開催した(平成17年2月17日−18日)。会では,口演発表が24題,ポスター発表が40題,研修講演として『in vitro発現系を用いた代謝型グルタミン酸受容体の機能制御機構と動的構造変化の解析』(久保義弘,生理学研究所),『植物の微小管−可視化,微細構造,構築機構−』(村田 隆司,礎生物学研究所),特別講演として『サル頭頂連合野での20年と技術課題』(渋谷英敏,東京都神経科学総合研究所)を行った。これらの報告は『生理学技術研究会報告(第27号)』にまとめた。 〈7〉第5回機械工作基礎講座の開催 生理学実験に必要な機器を題材に工作技術を研修し,その作製機器が研究現場で活用できることを目的に第5回を開催した(共通研究施設・機器研究試作室)。今回は初級コース(6名),応用コース(9名)で行った。 〈8〉労働安全衛生資格取得および技能講習受講 法人化に伴う研究所の安全衛生を課業務として遂行するために下記の資格取得と技能受講を行った。 (1) 衛生工学衛生管理者,(2) 第2種作業環境測定士,(3) 鉛作業主任者,(4) エックス線作業主任者,(5) 有機溶剤作業主任者,(6) 特定化学物質等作業主任者,(7) 普通第1種圧力容器取扱主任者,(8) 第2種酸素欠乏危険作業主任者
2.施設の運営状況〈1〉統合生理研究系(1)生体磁気計測装置室 永田 治 【概要】 本年度は,全頭型生体磁気計測装置において各種実験が順調におこなわれており,大きなトラブルは報告されていないが,磁気光ディスクドライブの初期不良等の軽微な問題は数例発生している。維持管理については,一般的にハードサイクルと呼ばれる点検作業を3年周期程度でおこなうことが多いが,当施設では経費削減とセンサの負荷を軽減するため,LHeの蒸発量が適切である限りおこなわない方向で運営している。 解析システムにおいてもMRI画像を含めて環境整備が完了した。基本的には旧BTiシステムと同様の環境であるが,MRIファイルフォーマットがDICOMに統一されたためすべてのデータを更新した。 用意される画像データは,MRI断層画像,三次元再構成画像および再構成画像から作成されるメッシュモデルの3種類である。三次元画像データおよびメッシュモデルは脳部位抽出の後,小脳部を削除処理した画像で構築されている。メッシュモデルはMCE解析に対応するため各被験者固有のデータを1〜10mmまで1mm間隔のレイヤーで作成した。三次元画像およびメッシュモデルの座標はすべてMEG座標系に変換されており,MEGデータと同様に画像データサーバにて一元管理され容易に利用できる環境である。ただし,新規の被験者を追加する場合は画像の加工変換作業を含めて1被験者あたり2時間程度の作業時間を要する。 ![]() メッシュモデルによるMCE画像とMRI三次元再構成画像の合成 平成16年度 生体磁気計測装置共同利用実験の実施状況について
*総日数はセンサを使用した計測実験の総日数であり、解析装置の使用日数は含まれていない。
〈2〉脳機能計測センター(1)形態情報解析室 山口 登 【超高圧電子顕微鏡利用状況】 今年度における超高圧電子顕微鏡共同利用実験は,合計12課題が採択され,全ての課題が実施された。これらの共同実験の成果は,超高圧電子顕微鏡共同利用実験報告の章に詳述されている。超高圧電子顕微鏡の年間の利用状況を表にまとめたので下記に示す。稼動率は,利用日数と使用可能日数より求めている。本年度の主な超高圧電子顕微鏡の改良・修理としては,コンデンサー絞り駆動部の修理,真空バルブ開閉用エアーチューブの交換作業,サイドエントリーホルダーゴニオ部のクリーニング作業などが行われた。また,老朽化した空調機の更新を行った。 2004年度 超高圧電顕月別稼動率
フィラメント点灯時間 398.6時間 使用フィルム枚数 5,436枚
(2)機能情報解析室 佐藤茂基 【概要】 今年度の装置整備状況は,主な事項として次の通りである。今年度,装置本体において長期間の修理を要する故障は起きず,比較的安定した稼働状態であった。 5月と8月に2台ある空調機がそれぞれ故障した為,その修理を行った。 9月に共鳴用チューニングユニットが故障した為,ユニットを交換し修理を行った。 共通機器であるフィルム自動現像機の整備点検を行った。 平成16年度のMR装置利用実績を別表に記す。
【機器利用率】 平成16年度リアルタイム装置月別稼働率
*保守以外の祝祭日は,使用可能日に含めた。
(3)生体情報処解析室 吉村伸明,村田安永 【概要】 生理学研究所における当施設の利用形態は,生体情報解析システム(高機能ワークステーション+アプリケーション,高画質フルカラープリンタ等),情報サービス(e-mail,WWW等),プログラム開発及びメディア変換などに分類することができる。また,これらを円滑に運用していくためには,所内LANの管理,整備や情報セキュリティの維持も重要である。このような現状をふまえたうえで,岡崎情報ネットワーク管理室とも連携しながら,施設整備を進めている。 生体情報解析システムは,データ解析・可視化,信号処理,画像処理,数式演算,統計処理,電子回路設計などの多くのアプリケーションを備え,これらは高機能ワークステーション上での利用のみならず,各部門施設のPCに直接導入し,ライセンスサーバで認証を行うことでの利用も可能である。登録者は95名で,研究推進のための積極的な利用がある。 生理学研究所のネットワーク利用状況は,メール登録者が525名。WWW登録者が52名。LANの端末数が1,356台。所外からのメール受信数は7,900通/週。所外へのメール発信数は2,700通/週。検出したウィルスメールは1,100通/週。 WWWは760台/週の端末から46,000ページ/週の閲覧があった。所内向けのダイヤルアップサービスは43回/週,5時間/週の利用があった。
〈3〉生理研・基生研共通施設(1)電子顕微鏡室 前橋 寛 【概要】 今年度は,予算削減と利用者数,利用率を考慮して,透過型電子顕微鏡(日本電子JEM-1200EX)2台の内,1台と走査型電子顕微鏡(日立S-800)の保守契約を中止し,明大寺地区のJEM-1200EX 1台と山手地区の透過型電子顕微鏡JEM-1010だけ保守契約(年1回点検)を継続した。 昨年度,新設された山手地区電子顕微鏡室には画像出力装置がないため,研究部門および研究施設から供出されたフルカラープリンタ(フジ,ピクトログラフィ3000,4000)を2台設置(実験室B)し,1台には画像処理用のPCと簡易型の電顕フィルム取り込み用のスキャナを新たに購入し設置した。
【研究内容一覧表】 本年度,室を利用してなされた研究の総件数は43件であった。機構内では30件あり,機構外は,国内で5件,国外ではスペイン,ドイツ,中国,ブルガリア,ハンガリー,チェコの研究者による利用が8件あった。下記の表はその研究部門・施設,大学,研究所と研究内容の一覧表である。
利用内容一覧表
所外(国内)
所外(国外)
(2)機器研究試作室 加藤勝巳 【概要】 機器研究試作室は多種多様な医学・生物学用実験機器の開発と改良,それに関わる技術指導,技術相談を室の役割としている。今,我々の周りには便利な物品があふれ,自分で工夫して作ったり,改良する機会が少なくなり,新しい研究には新しい研究機器を作るという『ものづくり』が希薄になり,一方で,最近の研究の多様化は室に新たな役割の模索を迫っている。そうした認識のもと,『ものづくり』能力の重要性の理解と機械工作ニーズの新たな発掘と展開を目指すために,室では,2000年度から,医学・生物学の実験研究に使用される実験装置や器具を題材にして,機械工作の基礎的知識を実習主体で行う機械工作基礎講座を開講し,2005年度は,汎用工作機械の使用方法を主体に実習する初級コースと応用コース(アクリル樹脂製パッチクランプ用チェンバー,簡易型一軸式マニュプレータ,レンズ及びフィルターホルダーの3テーマから受講希望者が選択)の二コースを開講する準備を進めている。参加希望者は,二コース合わせ生理研16名,基生研1名で,ガイダンスの後,マンツーマンで3〜4回の講習を行う予定である。 また,生理学研究所では,山手地区に移転した研究室のために,工作室を整備することになり,2005年4月に開設し,現在利用者のための安全及び利用講習会を行っている。 なお,機器研究試作室の平成16年度の利用状況は,以下の通りである。
機器研究試作室利用機器表 (件数)
機器研究試作室利用人数表
機器研究試作室部門別利用状況
〈4〉動物実験センター佐治俊幸,廣江猛,高橋知子,窪田美津子 【概要】 山手地区動物実験センター分室が完全稼働し,全飼育室を使用して動物の飼育が開始され,飼育数も順調に増加している。また,感染事故等の大きな問題も発生していない。 明大寺地区陸生動物室のSPF化の要望があり,本館地下及び2FのSPF化構想を実現すべく改修計画の立案と予算要求を行った。 本年の法人化に伴い,労働安全衛生関連の資格取得及び設備改善を行った。資格としては,特定化学物質等作業従事者2名,第一種圧力容器作業従事者3名,有機溶剤作業従事者1名を確保することができ,第一種圧力容器7台の設置届け及び検査証の交付も受けた。 エーテルを用いたマウス・ラットの処分を廃止し,炭酸ガスによる処分方法を導入した。これに伴い,4セットの炭酸ガス処分機を生理研予算により組み上げ,従来より設置済みの機器と併せて,明大寺地区及び山手地区に各3セットを設置した。 P2A実験室の設置要求があり,山手地区に計画したが,場所の確保が困難であったため,明大寺地区新館4FのP2,3実験室内に動物の飼育設備を設置し,P2A実験室とした。利用方法は,P2A実験室利用者会議で決定していく予定である。 センターの拡充に伴う運営経費及び作業員の確保が難しく,新規事業の開始が行えず,ユーザーへのサービス低下が発生している。飼育費及び餌代の運営交付金以外からの徴収に関しては,科研費からの振り替えが可能になるよう,準備を進めている。
【受精卵凍結・クリーンアップ事業】 山手地区分室へ移動させるマウスのクリーンアップ作業は終了し,新規導入のためのクリーンアップ作業へと移行した。 実施件数としては,クリーンアップ兼凍結が14件,凍結保存が32件,山手地区への移動のためのクリーンアップが2件であった。
【明大寺地区 陸生動物室】 平成16年度の飼育室利用部門数は,26研究部門(生理研 16部門,基生研 6部門,統合バイオサイエンスセンター 4部門)であった。 動物飼育数は減少の傾向を示している。これは,センター利用の減少を示すものではなく,山手地区への移動に伴い一時的に飼育数が減少したためであり,新規部門の実験が軌道に乗り次第,増加へ転ずると予測される。
【山手地区 動物実験センター分室】 平成16年度の飼育室利用部門数は,14研究部門(生理研7部門,基生研1部門,統合バイオサイエンスセンター6部門)であった。 利用者講習会を毎月開催するとともに,陸生動物利用者には実務講習会を実施している。 全SPF飼育室の病原微生物モニタリングが,3ヶ月に1回のペースで実施され,異常は検出されなかった。
【明大寺及び山手地区 水生動物室】 平成16年度の水生動物室利用状況は,生理研・基生研両研究所あわせて11部門・施設,16件の利用があった。 両地区ともに恒温室の改修設置希望が出されたが,センター予算で支出することが出来なかったため,改修希望部門の予算で工事を行った。山手地区の新設恒温室は,TG魚飼育エリアである。 加熱冷却ユニットの動作不良が5件あり,順次修理を行った。
陸生動物 部門別・動物種別搬入数(平成16年度)
水生動物 月別・動物種別搬入数(平成16年度)
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