既にこのトレーニングコースは国内の若手生理学研究者,神経科学者の間で広く浸透している。アメリカではMarine Biology LabやCold Spring Harborなど,実験手技を実際に学ぶコースが開催されている。しかしながらわが国ではそのようなコースは比較的まれである。生理学研究所のトレーニングコースでは,ほとんどのコースで実際に第一線の研究に用いられている実験設備を実習に提供し,実験のエクスパートが直接教えている。このようにして,新しい実験手法を紹介するだけでなく,他ではなかなか得ることができない実験のコツや実験データの解釈といったことも重要な要素となっている。若手研究者育成の重要性が指摘されている今,生理学研究所としては,今後とも研究者コミュニティの核となる研究所として,若手研究者の育成のためにこのコースをより継続,発展させていきたいと考えている。
- 【講演】
- 膜電位情報はどのように細胞の中へ伝えられるか?:膜電位感受性タンパクの多様性と原理
岡村康司教授(岡崎統合バイオサイエンスセンター・神経分化研究部門)
- 【実習内容】
(1)
- 位相差電子顕微鏡の原理と実践
新田浩二(ナノ形態生理)
- (2)
- 免疫電子顕微鏡法
重本隆一(脳形態解析)
- (3)
- N-結合型糖鎖の解析
池中一裕(分子神経生理)
- (4)
- in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析
岡村康司(統合バイオ神経分化,神経機能素子)
- (5)
- パッチクランプ基本法とその応用
富永真琴(機能協関,生体恒常機能発達,統合バイオ神経分化,統合バイオ細胞生理)
- (6)
- 2光子顕微鏡による観察の基礎
根本知己(脳機能計測センター生体情報解析)
- (7)
- スライスパッチクランプ法(基礎コース)
井本敬二(神経シグナル)
- (8)
- スライスパッチクランプ法(応用コース)
籾山俊彦(脳形態解析)
- (9)
- 局所神経回路の形態的解析法
窪田芳之(大脳神経回路論)
- (10)
- マウス・ラットの発生工学技術
三寶誠(行動・代謝分子解析センター)
- (11)
- 生理学実験のための電気回路・機械工作
大庭明生(技術課)
- (12)
- 摂食・飲水行動発現機構入門
志内哲也(生殖・内分泌系発達機構)
- (13)
- 麻酔下動物での電気生理実験
伊佐正(認知行動発達機構)
- (14)
- 慢性動物実験法入門
南部篤(生体システム)
- (15)
- 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
金桶吉起,柿木隆介(感覚運動調節)
- (16)
- 脳機能画像解析入門
田邊宏樹(心理生理)
また,例年通りコースの終了後,受講者にアンケートをとってその意見を次回以降に活かすようにしている。主な意見は以下の通り。尚,アンケートの全内容は生理学研究所のホームページで公開されている(http://www.nips.ac.jp/training/2006/TC2006Q.pdf) ので,そちらを参照されたい。