生理学研究所年報 第29巻
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第18回 生理学研究所
生理科学実験技術トレーニングコース
“生体機能の解明に向けて”
−分子・細胞レベルからシステムまで−

2007年7月23日−7月27日
担当:伊佐 正(認知行動発達機構)

【概要】
 平成19年度で第18回を迎える生理科学トレーニングコースは7月23日(月)より7月27日(金)まで生理学研究所の明大寺,山手両キャンパスにて開催された。下記の16個のコースを設定し,受講者の公募を行ったところ,200名を超す応募を受けた。本来全員を採択して受講していただきたいところであるが,キャパシティに限りがあることからそのうち148名を採択して受講していただいた。

 既にこのトレーニングコースは国内の若手生理学研究者,神経科学者の間で広く浸透している。アメリカではMarine Biology LabやCold Spring Harborなど,実験手技を実際に学ぶコースが開催されている。しかしながらわが国ではそのようなコースは比較的まれである。生理学研究所のトレーニングコースでは,ほとんどのコースで実際に第一線の研究に用いられている実験設備を実習に提供し,実験のエクスパートが直接教えている。このようにして,新しい実験手法を紹介するだけでなく,他ではなかなか得ることができない実験のコツや実験データの解釈といったことも重要な要素となっている。また,何度目かの受講になる「リピーター」もある一定の数が見られ,若手研究者にとっても知己を増やす場として活用されていることもうかがえる。若手研究者育成の重要性が指摘されている今,生理学研究所としては,今後とも研究者コミュニティの核となる研究所として,若手研究者の育成のためにこのコースをより継続,発展させていきたいと考えている。

 プログラムは以下の通りである。

 

【講演】
受講者全員を対象とする講演:
イオンチャンネル・受容体の機能制御機構と動的構造変化
久保義弘教授(生理学研究所・神経機能素子研究部門)

【実習内容】
(1)
位相差電子顕微鏡の原理と実践
永山國昭,Radostin Stoyanov Danev,新田浩二,重松秀樹(ナノ形態生理)

(2)
免疫電子顕微鏡法
重本隆一(脳形態解析)

(3)
in situ hybridization法を用いた二重染色法
竹林浩秀(分子神経生理)

(4)
遺伝子改変動物作製(マウス)
富田江一(行動・代謝分子解析センター)

(5)
in vitro発現系を用いたイオンチャンネル受容体の機能解析
久保義弘,岡村康司(神経機能素子,神経分化)

(6)
2光子顕微鏡によるバイオイメージングの基礎と応用
根本知己,鍋倉淳一(生体情報解析,生体恒常機能発達機構)

(7)
パッチクランプ法
富永,柴崎,稲田,曽我部(細胞生理)
鍋倉,石橋,前島,西巻(生体恒常機能発達機構)
久木田(神経分化),沼田(機能協関)

(8-1)
スライスパッチクランプ法
井本敬二(神経シグナル)

(8-2)
スライスパッチ応用コース
籾山俊彦(脳形態解析)

(9-1)
大脳皮質ニューロンの解析(大脳皮質スライスでのホールセル記録)
窪田芳之(大脳神経回路論)

(9-2)
大脳皮質ニューロンの解析(大脳皮質の免疫電顕観察法)
窪田芳之(大脳神経回路論)

(10-1)
生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング (1)
(PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製)
大庭明生(技術課)

(10-2)
生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング (2)
(C言語によるPICプログラミング)
大庭明生(技術課)

(11)
摂食・飲水行動発現機構入門
志内哲也(生殖・内分泌系発達機構)

(12)
麻酔下動物での急性電気生理実験
伊佐正(認知行動発達機構)

(13)
慢性動物実験法入門
南部篤(生体システム)

(14)
視知覚の脳内メカニズムの実験的解析
伊藤南(感覚認知情報)

(15)
脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
金桶吉起,柿木隆介(感覚運動調節)

(16)
ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門
田邊宏樹(心理生理)

 また,例年通りコースの終了後,受講者にアンケートをとってその意見を次回以降に活かすようにしている。主な意見は以下の通り。尚,アンケートの全内容は生理学研究所のホームページで公開されている (http://www.nips.ac.jp/training/2006/TC2006Q.pdf)ので,そちらを参照されたい。

 

【アンケート結果】受講者 148名,うち回答者116名(回収率78%)
  1. 参加者の身分 (%)
    学部学生 11,大学院生(修士)26,大学院生(博士)33,大学等の研究員(ポスドク)8,企業の研究者 7,国立研究所などの研究者 4,助手・講師 7,その他 3

  2. このトレーニングコースは何で知りましたか?(複数回答可)(%)
    インターネット 30,雑誌などの広告 1,友人・知人・先生の紹介 66,ポスター 16,以前参加したことがある 13,その他 2

  3. 参加動機は?(複数回答可)(%)
    自分の研究レベルの向上 80,新たな分野を研究したい 57,ほかの研究者との交流 40,生理研や総研大に興味があったため 24,その他 3

  4. インターネットを使った応募方法や電子メールによる連絡について(複数回答可)(%)
    便利でよかった 95,不便だった 3,やり方がわかりにくい 0,連絡が来なくて心配だった 11,連絡が多すぎた 0,特になし 2

  5. 受講料(10,200円)は?(%)
    高い 5,ちょうどよい 65,安い 30,無回答 0

  6. トレーニングコースを利用するためにかかった交通費・宿泊費は?(%)
    負担が大きい 8,これぐらいはやむをえない 81,たいした負担ではない 11,無回答 0

  7. 受講料・交通費・旅費の補助を研究費・研究室・会社などから受けましたか?(%)
    すべて自己負担 46,部分的に(おおよそ2/3まで)補助を受けた 11,ほとんど(おおよそ2/3以上)補助を受けた 43,無回答 0

  8. 講演はいかがでしたか?(複数回答可)(%)
    ためになった 66,面白かった 65,難しかった 9,興味の無い分野で退屈だった 4,内容が簡単でつまらなかった 0,その他 3,無回答 0

  9. 実習期間は?(%)
    長い 6,ちょうどよい 70,短い 23,無回答 1

  10. 自習内容(%)
    大変満足 55,満足 40,まあまあ 5,少し不満 0,かなり不満 0,無回答 0

  11. 交流会に関して(複数回答可)(%)
    研究スタッフと交流できた 49,他の参加者と交流できた 72,有意義だった 41,面白かった 31,時間の無駄だった 1,不参加 5,無回答 1

 


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