生理学研究所年報 第30巻
 トレーニングコース
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第19回 生理科学実験技術トレーニングコース
“生体機能の解明に向けて”
-分子・細胞レベルからシステムまで-

2008年7月28日-8月1日
担当:重本隆一(脳形態解析研究部門)

【概要】
 平成20年度で第19回を迎える生理科学実験技術トレーニングコースは7月28日(月)より8月1日(金)まで生理学研究所の明大寺,山手両キャンパスにて開催された。下記の16個のコースを設定し,受講者の公募を行ったところ,200名を超す応募を受けた。本来全員を採択して受講していただきたいところであるが,キャパシティに限りがあることからそのうち149名を採択して受講していただいた。

 既にこのトレーニングコースは国内の若手生理学研究者,神経科学者の間で広く浸透している。アメリカではMarine Biology LabやCold Spring Harborなど,実験手技を実際に学ぶコースが広く知られている。しかしながらわが国ではそのようなコースは比較的まれであり,特に生理学実験の多くは実際に体験しないとイメージを掴み難いため,本コースは広範な支持を得てきた。また生理学研究所のトレーニングコースでは,ほとんどのコースで実際に第一線の研究に用いられている実験設備を実習に提供し,実験のエクスパートが直接教えている。新しい実験手法を紹介するだけでなく,他ではなかなか得ることができない実験のコツや実験データの解釈といったことを実例に即して教えている点も重要な要素となっている。また,何度目かの受講になる「リピーター」もある一定の数が見られ,若手研究者にとっても知己を増やす場として活用されていることもうかがえる。若手研究者育成の重要性が指摘されている今,生理学研究所としては,今後とも研究者コミュニティの核となる研究所として,このコースをより継続,発展させていくことが大変重要な使命であると考えている。

 プログラムは以下の通りである。

 

【講演】
受講者全員を対象とする講演:AMPA型グルタミン酸受容体の制御機構
深田正紀(生理学研究所・生体膜研究部門)
【実習内容】
(1)
位相差電子顕微鏡の原理と実践
Radostin Stoyanov Danev(ナノ形態生理)
(2)
神経幹細胞の培養法
等 誠司(分子神経生理)
(3)
海馬神経初代培養と生細胞イメージング
深田正紀(生体膜)
(4)
遺伝子改変マウス作製の基礎から応用へ
富田江一(行動・代謝分子解析センター)
(5)
in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析
久保義弘(神経機能素子)
(6)
2光子顕微鏡による細胞の動態と機能の可視化解析法-その基礎と応用
根本知己(生体情報解析),鍋倉淳一(生体恒常機能発達機構)
(7)
パッチクランプ法
久木田(機能協関),鍋倉(生体恒常機能発達機構),富永(細胞生理)
(8-1)
スライスパッチクランプ法-基礎コース
井上 剛(神経シグナル),大塚 岳(大脳神経回路論)
(8-2)
スライスパッチクランプ法-応用コース
籾山俊彦(脳形態解析)
(9)
ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析
東島眞一(神経分化)
(10)
摂食・飲水行動発現機構入門
志内哲也(生殖・内分泌系発達機構)
(11)
麻酔下動物での急性電気生理実験
伊佐 正(認知行動発達機構)
(12)
慢性動物実験法入門
南部 篤(生体システム)
(13)
視知覚の脳内メカニズムの実験的解析
伊藤 南(感覚認知情報)
(14)
脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
金桶吉起,柿木隆介(感覚運動調節)
(15)
脳機能画像解析入門
齋藤大輔(心理生理)
(16-1)
生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製)
大庭明生(技術課)
(16-2)
生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(C言語によるPICプログラミング)
大庭明生(技術課)

 また,例年通りコースの終了後,受講者にアンケートをとってその意見を次回以降に活かすようにしている。主な意見は以下の通り。尚,アンケートの全内容は生理学研究所のホームページで公開されている(http://www.nips.ac.jp/training/2008/TC2008Q.pdf) ので,そちらを参照されたい。

 

【アンケート結果】受講者 148名,うち回答者129名(回収率87%)
  1. 参加者の身分 (%)
    学部学生 7,大学院生(修士)29,大学院生(博士)29,大学等の研究員(ポスドク)9,企業の研究者 7,国立研究所などの研究者 2,助手・講師 11,その他 6
  2. このトレーニングコースは何で知りましたか?(複数回答可)(%)
    インターネット 38,雑誌などの広告 0,友人・知人・先生の紹介 64,ポスター 16,以前参加したことがある 13,その他 2
  3. 参加動機は?(複数回答可)(%)
    自分の研究レベルの向上 84,新たな分野を研究したい 47,ほかの研究者との交流 36,生理研や総研大に興味があったため 16,その他 4
  4. インターネットを使った応募方法や電子メールによる連絡について(複数回答可)(%)
    便利でよかった 92,不便だった 0,やり方がわかりにくい 2,連絡が来なくて心配だった 11,連絡が多すぎた 0
  5. 受講料(10,500円)は?(%)
    高い 4,ちょうどよい 57,安い 39
  6. ロッジを利用しましたか?(%)
    利用できた 20,希望したが利用できなかった 45,希望しなかった 35
  7. トレーニングコースを利用するためにかかった交通費・宿泊費は?(%)
    負担が大きい 19,これぐらいはやむをえない 64,たいした負担ではない 16
  8. 受講料・交通費・旅費の補助を研究費・研究室・会社などから受けましたか?(%)
    すべて自己負担 50,部分的に(おおよそ2/3まで)補助を受けた 11,ほとんど(おおよそ2/3以上)補助を受けた 39
  9. 講演はいかがでしたか?(複数回答可)(%)
    ためになった 71,面白かった 53,難しかった 32,興味の無い分野で退屈だった 5,内容が簡単でつまらなかった 0,その他 9
  10. 実習期間は?(%)
    長い 5,ちょうどよい 74,短い 21
  11. 実習内容 (%)
    大変満足 51,満足 43,まあまあ 5,少し不満 1,かなり不満 0
  12. 交流会に関して(複数回答可)(%)
    研究スタッフと交流できた 45,他の参加者と交流できた 57,有意義だった 33,面白かった 27,時間の無駄だった 0,不参加 20

 



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