生理学研究所年報 第31巻
 はじめに
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はじめに

 生理学研究所年報第31巻をここに刊行し、平成21年(2009)年度における共同利用研究機関としての生理学研究所の事業活動、研究成果の報告をさせていただきます。
 生理学研究所は、1977年5月に開設されて本年で33年目を迎えました。そして、2004年4月より大学共同利用機関法人自然科学研究機構を構成する5研究機関の1つとなって6年目となりました。「法人化」の後に、生理学研究所はいくつかの組織改編を行いながら、「人体基礎生理学の研究と研究者育成のための唯一の大学共同利用機関」としての役割をよりよく果しうる体制を整えてまいりました。2009年度におきましても、運営費交付金の削減の続く中にもかかわらず、コミュニティ研究者の皆様のご協力と、所員一同の努力によって、多数の共同研究・共同利用実験を行いつつ大きな成果をあげることができたものと自負していますが、関係者の皆様のご評価・ご判定を仰ぐ次第であります。
 生理学研究所の第1の使命は、人のからだと脳の働き、そしてそれらの仕組みについて、世界トップレベルの研究を進めることにあります。幸い、生理学研究所は、生理科学・脳神経科学の分野で高い評価(例えば、2004-2008年ISI論文引用度指数:神経科学分野第2位、総合分野第3位)を受ける研究を展開してまいることができました。第2の使命は、このような世界トップレベルの研究を基礎にして、全国の研究者コミュニティの方々との共同利用実験・共同研究を進めるということにあります。2009年度は、「一般共同研究」37件、「計画共同研究」37件、超高圧電子顕微鏡、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)、脳磁計(MEG)を供しての「共同利用実験」37件、「研究会」25件、「国際シンポジウム」1件、「国際研究集会」1件の事業を進め、国内外から多数の研究者の方々にご参加いただけることができました。更には、「多次元共同脳科学推進センター」に「流動連携研究室」を新設し、サバティカル制度等を利用した長期滞在型共同利用研究を行う研究者を、客員教授、客員准教授又は客員助教として受け入れることを始めました。そして、本研究所の第3の使命は、若手研究者を発掘・育成することにあります。総合研究大学院大学(総研大)の基盤機関として大学院生の指導にあたると共に、全国からの多数の大学院生を受託する形で指導もしています。因みに、先述の論文引用度指数:神経科学分野第1位は総研大であり、私達の教育レベルの高さを示しているものと思います。更には、生理科学実験技術トレーニングコースを開催し、全国から150名以上の若手研究者・院生・学生を受け入れて教育すると共に、「多次元共同脳科学推進センター」を中心として、分野をまたぐ若手脳科学研究者の育成のための異分野連携的脳科学研究に関するワークショップやレクチャーコースを開催し、全国から600名以上の参加を得ました。加えて、「せいりけんニュース」隔月発刊や「せいりけん市民講座」5回開催や出前授業17回開催など、未来の研究者を発掘するための多種の情報発信活動も「広報展開推進室」が中心となって行ってまいりました。
 所員一同「生体を対象に分子、細胞、器官、個体レベルの研究を推進し、究極において人体の機能を総合的に解明することを目標とする」という創設来の基本姿勢を堅持しながら、主として脳の働きと生体恒常性の仕組みについての世界トップレベルの研究を推進し続けることができるよう、引き続き努力を重ねてまいりたいと考えております。皆様方のご支援・ご鞭撻を心よりお願い申しあげます。

平成22年11月10日

生理学研究所長 岡田泰伸

 



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