生理学研究所年報 第31巻
 トレーニングコース
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第20回 生理科学実験技術トレーニングコース
“生体機能の解明に向けて”
-分子・細胞レベルからシステムまで-

2009年8月24日-8月28日
担当:重本隆一(脳形態解析研究部門)

【概要】
 生理学研究所のトレーニングコースは,今年で20回目を迎え、大学院生やポスドクレベルの広い分野からの若い研究者が,生理科学における実験技術を学ぶ場として完全に定着した感がある。毎年7月下旬から8月上旬に行われてきたが,本年は国際生理学会などの日程を考慮し,8月下旬に行われた。しかし受講希望者の数やコースの内容には例年に比べて大きな変化はなく,今年も約150名の参加者を得て,好評のうちに終了することができた。本年も実習内容に関する満足度は極めて高く,アンケートにおいては「満足した」という回答が96%を占め「まあまあ」まで含めれば100%に達している。またトレーニングコースをきっかけとして,研究者間の交流が始まったり深まったりすることによって,共同研究に発展することも頻繁に認められる。このことは,生理学研究所の大学共同利用機関としての使命を果たしていく上でも,トレーニングコースが既に重要な位置づけを持っていることを示している。今後とも我が国における最先端の生理科学実験技術の普及,生理学研究のレベル向上,新たな共同研究の促進に,生理学研究所のトレーニングコースは大きな役割を果たしていくものと考えられる。

 

【講演】
受講者全員を対象とする講演:大脳皮質における特異的神経結合とその経験依存的発達
吉村由美子(生理学研究所・神経分化研究部門)
【実習内容】
(1)
生物試料の位相差低温電子トモグラフィー
Radostin Danev,福田善之(ナノ形態生理)
(2)
免疫電子顕微鏡法
重本隆一(脳形態解析)
(3)
海馬神経初代培養と生細胞イメージング
深田正紀(生体膜)
(4)
ジーンターゲティングマウス作製の基礎から応用へ
冨田江一(遺伝子改変動物作製室)
(5)
in vitro発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析
久保義弘(神経機能素子)
(6)
2光子顕微鏡による神経・分泌細胞の形態と生理機能の可視化解析法
根本知己(多光子顕微鏡室),鍋倉淳一(生体恒常機能発達機構)
(7)
パッチクランプ法
小泉,久木田,秋田(機能協関),鍋倉,石橋(生体恒常機能発達機構),
山中,曽我部(細胞生理)
(8-1)
スライスパッチクランプ法
井本敬二(神経シグナル),川口泰雄(大脳神経回路論)
(8-2)
in vivoパッチクランプ法-応用コース
井本敬二,古江秀昌(神経シグナル)
(9)
ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析
東島眞一(神経分化)
(10)
摂食・飲水行動発現機構入門
箕越靖彦(生殖・内分泌系発達機構)
(11)
麻酔下動物での感覚応答の多チャンネル記録
伊佐 正(認知行動発達機構)
(12)
慢性動物実験法入門
南部 篤(生体システム)
(13)
視知覚の脳内メカニズムの実験的解析
伊藤 南(感覚認知情報)
(14)
脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
金桶吉起,柿木隆介(感覚運動調節)
(15)
ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門
田邊宏樹(心理生理学)
(16)
生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング
大河原浩(技術課)

 各コースのさらに具体的な内容に関しては,以下を参照されたい。

 http://www.nips.ac.jp/training/2009/courses.html

 トレーニングコース終了時には,例年参加者からアンケートをいただいている。次ページに最近5年間のアンケートの主な質問項目に対する回答結果の集計を示す。ほとんどの項目について,毎年似かよった結果が出ており非常に安定した高評価を得ていることが分かる。具体的なコメントについても以下に公開されている。

 http://www.nips.ac.jp/training/2009/TC2009Q.pdf

 

【アンケート結果】受講者 148名,うち回答者132名(回収率89%)
  1. 参加者の身分 (%)
    学部学生 7,大学院生(修士)25,大学院生(博士)27,大学等の研究員(ポスドク)7,企業の研究者 11,国立研究所などの研究者 1,助手・講師 16,その他 5
  2. このトレーニングコースは何で知りましたか?(複数回答可)(%)
    インターネット 29,雑誌などの広告 0,友人・知人・先生の紹介 70,ポスター 17,以前参加したことがある 5,その他 1
  3. 参加動機は?(複数回答可)(%)
    自分の研究レベルの向上 86,新たな分野を研究したい 53,ほかの研究者との交流 41,生理研や総研大に興味があったため 20,その他 1
  4. インターネットを使った応募方法や電子メールによる連絡について(複数回答可)(%)
    便利でよかった 99,不便だった 0,やり方がわかりにくい 7,連絡が来なくて心配だった 3,連絡が多すぎた 1
  5. 受講料(10,500円)は?(%)
    高い 8,ちょうどよい 52,安い 41
  6. ロッジを利用しましたか?
    利用できた 16,希望したが利用できなかった 51,希望しなかった 33
  7. トレーニングコースを利用するためにかかった交通費・宿泊費は?(%)
    負担が大きい 9,これぐらいはやむをえない 76,たいした負担ではない 15
  8. 受講料・交通費・旅費の補助を研究費・研究室・会社などから受けましたか?(%)
    すべて自己負担 41,部分的に(おおよそ2/3まで)補助を受けた 16,ほとんど(おおよそ2/3以上)補助を受けた 43
  9. 講演はいかがでしたか?(複数回答可)(%)
    ためになった 73,面白かった 67,難しかった 29,興味の無い分野で退屈だった 2,内容が簡単でつまらなかった 0,その他 3
  10. 実習期間は?(%)
    長い 4,ちょうどよい 76,短い 20
  11. 実習内容 (%)
    大変満足 62,満足 34,まあまあ 4,少し不満 0,かなり不満 0
  12. 交流会に関して(複数回答可)(%)
    研究スタッフと交流できた 51,他の参加者と交流できた 71,有意義だった 43,面白かった 33,時間の無駄だった 0,不参加 9

 



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