機能的神経画像法

CBF測定の原理

局所の神経活動、特にシナプス活性は、脳の特定の領野におけるブドウ糖代謝と平行して増大し、さらに、局所脳血流量(CBF)は、ブドウ糖代謝と平行関係にあり、後者は当該領野に対する酸素供給量により調節される(Raichle 1987)。このため、神経賦活度の変化は、局所CBFの変化を測定することにより、推定することができる。脳賦活実験では、被験者が特定の課題を遂行する時のCBFを測定し、安静時における数値と比較する。そのようにして、活動時と安静時とにおける賦活度の分布の違いを視覚化する。賦活度が変化している領野は、特定の課題に関与する脳領域であると考えられる。 PETは、もともと局所血流量を測定するために用いられてきた。この断層撮影技法は、γ線(陽電子の消滅する際に発生)の測定と体内における陽電子放出核種トレーサーの分布状況に関する計算に基づいている。適切なトレーサーを用いることによって、CBFの測定に加え、さまざま生理学的・生化学的測定を行うことができる。
近年、血流量の変化を測定するもう一つの技法として、fMRIが用いられるようになってきた。この画像技法は、水素原子核のMRを利用する。水素原子に均一な静磁場をかけると、特定のラジオ波を吸収し(共鳴)、放出(緩和)を行う(核MR)。静磁場と平行にコイルを設置することにより、この現象を徐々に減衰する交流電流すなわちMR信号として検出することができる。 このMR信号に埋め込まれた位置情報は、コンピュータ断層撮影(CT)の原理に基づいて検出を行う。このようにして得られた画像は、主として生体内組織間の組成の違いに起因する水素原子の分布密度と緩和時間の違いを反映している。MRIは、生体内に(主に水として)豊富に存在する水素原子を検出するのに適している。そのため、MRIは、頭蓋骨や脊柱にしっかりと保護されている神経組織の画像を撮影するのに特に有用である。MRIには高いコントラスト分解能があることから、初期臨床においては、脳の解剖学的構造を詳細に画像化するために用いられた。しかし1900年代の初頭に、血中の酸素を内因性の造影剤として利用する局所CBF変化の画像化に成功し、fMRIへの道が拓かれた(OgawaとLee 1990)。この方法の利点は、数秒間隔で全脳のCBF変化を記録でき、PETに比べてデータ収集量をはるかに大きくすることができることにある。現在、局所CBF変化は、数mm程度の空間的解像度により秒単位で計測可能である。