研究

電気生理的手法の欠落

当部門の立ち上げから、TMSをはじめとする電気生理的手法を担当していた本田助教授の転出に伴い、統合的脳機能解析システムの重要なパーツである電気生理的手法が手薄となっている。今後、fMRI-脳波同時計測が重要な手段となることから、電気生理的手法に精通した臨床神経生理学者の補強が必要と考えられる。この点は9年前の部門評価時に指摘のあった点だが、dualf MRIや7TMRIの導入、さらに深層学習の適用などイメージングに研究の重心がかかっているため、果たせていない。
 

統計数理学的解析手法のキャッチアップと開発

ネットワーク解析手法
今後複数個体間の定量的解析を進めるためには、時系列データの統計数理学的な扱いが必須である。数年来、Cuban Neuroscience CenterのBosch教授に客員教授を勤めていただき、resting state functional MRIや、dual functional MRI、視線のデータ解析を進めた。今後もこの関係を継続発展させていく必要がある。

HCP protocol
HCPは、ヒトを対象としたMRIとMEGによる脳回路網マッピングの大規模研究であり、2012年に開始された米国の国家プロジェクトで、非常に精度の高い計測プロトコールと画像データ精度管理法を開発しており、特に注目すべきは、T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像、安静時fMRIを組合せて、皮質の部位同定(cortical parcellation)を可能としている点である。これは当部門における2者間相互作用の解析に大きなインパクトを与え、さらに、3TMRIと7TMRIの対応付けにより、個々の皮質領域の内部構造に踏み込むことが可能となり、社会的相互作用の神経基盤解析に大きなインパクトを与える。さらには種間比較((3.5.1)における基盤技術となることから、この技術開発元であるワシントン大学、国内で先進的取り組みをしている理研林拓也博士との連携研究を推進する必要がある。
 

 MRI

重要な研究ツールである3テスラMRI装置が、2010年度より3台となり、その維持管理と効率的運用にいっそうの努力が必要となった。具体的には、技官による装置管理、事務担当者による被験者予約など、役割分担によって、研究者が研究に集中できる環境を作る努力を続けてきた。3テスラ装置のうち一台(Allegra)は2017年度末をもって運用を停止した。7TMRIの運用が本格化しており、超高磁場MRIの専門家である福永准教授と生体機能情報解析室の近添准教授を中心に運営体制を固めていく必要がある。
MRI撮像については、特に基礎研究用に設置されたMR装置の安全性に関する考え方が重要になってきている。2016年より、日本磁気共鳴医学会と日本神経科学学会の合同ワーキング・グループが設立され、定藤と福永がそのメンバーとして参加し、指針の策定を進めて「基礎研究に用いるヒトを対象としたMRI検査の指針」を2018年9月に公表した。これは、MR装置を適切かつ安全に管理運用するための安全管理体制を確立することに重点を置いたものである。