[archive] 2009年度~現在
社会能力の発達過程をモデル化するために、実験・観察→モデル形成→実験・観察によるモデル検証というサイクルを、脳機能画像法のみならず、発達期縦断行動解析を含めて強力に推進する必要がある。そのためには、ターゲット(例えば、向社会行動)を絞って発達モデルを提唱し、その検証を進める必要がある。発達障害群への機能的イメージングの適用も重要である。さらに、脳機能画像法を発達期へ適用する方向での技術開発と実験デザインの工夫、乳児実験心理学者との共同、時系列データの統計解析手法の更なる開発が必要となってこよう。技術的には、複数個体間の相互作用を定量する手法の開発をさらに進める必要がある。これらを推進するための具体的な方策として、文部科学省委託事業「社会的行動の基盤となる脳機能の計測・支援のための先端的研究開発」(社会能力の神経基盤と発達過程の解明とその評価・計測技術の開発)及び科研費(基盤S 21220005向社会行動の神経基盤と発達過程の解明)を受けて「社会能力の神経基盤と発達過程の解明とその評価・計測技術の開発」に関する研究を遂行した。
目標は、正常なヒトにおいて、言語性・非言語性のコミュニケーション能力を基盤とした高次脳機能である社会能力の発達過程解明に資する社会能力に関連する生物学的指標(ソーシャルブレインマーカー:SBM)候補を開発することである。ヒトの脳機能イメージングと定量的行動解析手法を組み合わせて、社会能力に関与する神経基盤を描出することにより、社会能力を制御する因子としての発達環境、自閉症発達関連遺伝子および分子の作用し得る神経回路系を特定する。一方で実際のヒト社会行動における社会能力計測技術として、集団の脳機能・視線・行動計測法を開発する。