第22回生理学技術研究会 研修講演3
平成12年2月25日(金) 13:00〜13:50

細胞膜の微細構造と機能解析のためのフリーズフラクチャーレプリカ電子顕微鏡法について

藤本 和 教授
(福井県立大学看護福祉学部生体機能学・構造学)
(理化学研究所脳科学総合研究センター)

 現在,細胞膜の機能分子,例えば受容体やイオンチャネルなどの内存性タンパク質の局在を免疫電子顕微鏡法(免疫電顕)によって観察することは決して難しいことではない.通常,免疫電顕法では,包埋前あるいは包埋後標識にかかわらず,最終的には超薄切片を作製し,透過型電顕で観察することになる.膜タンパク質は二次元的なある広がりをもって細胞膜上に局在しているが,超薄切片による観察では,このような二次元的な分布状態に関する情報は全く得られない.細胞膜の二次元的な微細構造解析法として,フリーズフラクチャーレプリカ法が広く用いられている.フリーズフラクチャーレプリカ法では,先ず細胞をアルデヒド系の固定液で固定,グリセリンで氷晶防止処理を施した後に,液体窒素で凍結する.フリーズフラクチャー装置内の高真空下で,凍結試料をフラクチャーし,生体膜の疎水性部分(膜の内面)を露出させた後,このフラクチャー面を白金-炭素蒸着することによって,極めて薄いレプリカを作製する.漂白剤で細胞成分を溶解除去した後,レプリカを回収し,透過型電顕で観察する.膜リン脂質の疎水性部分は平滑なフラクチャー面として観察され,そして種々のチャネルやレセプターなどの内在性膜タンパク分子は直径約8〜10nmの膜内粒子として平滑なフラクチャー面上に観察される.例えば,ギャップ結合は直径約8 nmの膜内粒子の集合体として観察される.その他,タイト結合のように細胞膜が特殊化した部位では,膜内粒子の凝集や特異な配列構造が観察される.フリーズフラクチャーレプリカ法は,細胞膜の形態学的解析において極めて優れた手法であるが,個々の膜内粒子の構成タンパク質や膜脂質成分の細胞化学的標識には適さなかった.最近,私たちはフリーズフラクチャーレプリカを用いて免疫細胞化学的標識を行う方法,sodium dodecyl sulfate(SDS)処理フリーズフラクチャーレプリカ標識法(SDS-digested freeze-fracture replica labeling, 以下SDS-FRLと略す)を考案し,これによって,レプリカ上で膜機能分子の同定や二次元的な分布状態や動態の解析が可能になった.本講演では,SDS-FRLのみならず,色々なレプリカ電顕法について,原理,実際の手技と電顕像の解釈の仕方を中心に解説する.

(連絡先)E-mail: fujimoto@fpu.ac.jp

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