第22回生理学技術研究会 研修講演4
平成12年2月25日(金) 14:00〜14:50

共焦点顕微鏡を使った脳神経回路の三次元画像再構成

伊藤 啓 先生
(基礎生物学研究所 細胞増殖研究部門)

 脳内の神経線維は単純な平面状でなく、三次元空間内を複雑に蛇行している。この回路構造を明らかにするためには、共焦点顕微鏡を用いた三次元画像再構成のテクニックが極めて有効である。しかしコンピューター制御の高価な共焦点顕微鏡といえども、ボタン一つで目的の像が得られるわけではない。今回は GFP を用いた昆虫脳の神経細胞の解析を例にとり、特に200ミクロン近い厚みのある標本で精細な再構成画像を得るための、いくつかのノウハウを紹介する。 1.共焦点顕微鏡の使い分け:共焦点顕微鏡には、レーザー光を1つのピンホールを通して順次スキャンして光電子像倍管で検出する通常のタイプ(BioRad, Zeiss, Leica 等)と、多数のピンホールの空いた円盤を高速回転させて多点同時スキャンを行なうタイプ(横河電機)とがある。前者は試料準備や撮影に時間がかかるが、画質がよい。後者はCCDビデオカメラや肉眼で共焦点画像を観察できるので簡便であり、スクリーニングなど多数の標本を効率よく観察するのにむいている。 2.光量減衰への対策:三次元画像再構成には数十枚から200枚の画像を連続断層撮影して重ね合わせるが、長時間のレーザー照射によって蛍光色素が褪色するだけでなく、試料の奥の方ほど光が吸収されて暗くなるため、レーザー強度や検出器の感度を撮影中に漸次高めることで、明るさを均一に補正する必要がある。 3.屈折率による深さ補正:レーザー光は試料と媒質、レンズの間で屈折するので、ステージが1ミクロン動いても焦点面が同じ1ミクロンだけ移動するわけではない。この分の補正を忘れると、深さ方向が扁平になった再構成になってしまう。 4.専用ソフトによる三次元再構成:共焦点顕微鏡のシステムに標準付属する三次元再構成ソフトは、機能が低いものが多い。遠近感や透過率を反映させた再構成を行なうためには、画像ワークステーションを用いた専用ソフトの併用が必要になる。

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