在学生の声「生理研で学んでいます」

感覚認知情報研究部門 西尾亜希子

「生理研で学ぶことのメリット」

 生理研に来て約4年経った今、現在の研究室にめぐり合えた私は幸せ者だと思います。そして様々な場面で、生理研で学ぶことのメリットを感じます。  たとえば、実験中。私は動物を扱う電気生理学は全くの未経験でしたが、実験や手術方法からサルの世話に至るまで、教授から一対一で直接教えてもらいました。これは学生一人当たりのスタッフ人数が多い研究所ならではだと思います。しかも生理研には日本を代表する研究所というに相応しい、素晴らしいスタッフと贅沢な実験設備があります。おまけに不具合が起こったときには専門の技術職員さんが助けてくれます。生理研ではプロフェッショルに囲まれて、その技術や研究者としての考え方を学ぶことができます。
 次に研究に行き詰った時。生理研では研究会やシンポジウムは頻繁に行われているため、交通費や移動時間をかけずに知識を広げたり、論文でしか 知らなかったような高名な先生方とも当たり前のように話したりすることができます。このような機会に、心地よい刺激を受けています。また、他の研究室や研究所の方々とディスカッションをする機会も多く、自分の研究に対する示唆もたくさん得ることができます。私のようなペーペーの学生がこんな偉い人と話をして良いのか?と思うことも多々ありますが、そういった機会がたくさんある生理研の環境は本当に恵まれていると思います。
 そして、やる気が出ない時。生理研のある岡崎市は少し市街地を離れれば豊かな自然が残っているため、友人と川で泳いだり釣りをしたり、花火や蛍を見たりとお金をかけずにリフレッシュすることができます。音楽好きの人ならアンサンブルも楽しめます。  生理研にはやる気のある学生を待っている先生がたくさんいます。研究内容に興味があるなら、まず研究室を訪ねてみて下さい。そして信頼できる先生にめぐり合えたなら、あとは学生のやる気次第です。生理研には学生の研究をサポートする為の十分すぎる環境が整っています。

生殖内分泌系発達機構研究部門 戸田知得

「生理研での大学院生活」

 私は現在、生化学的、分子生物学的な手法を用いて視床下部による全身レベルの代謝調節機構について研究を行っています。脳や神経系に興味があった私は、生理研という脳に関する国内有数の研究所で勉強したいと思い生理研に入学しました。実際に、生理研では金曜に2時間の授業があるだけではなく、それ以上に国内外の研究者を招いた講演や研究会があるので、脳に関する勉強には最適の場所です。代謝に関する話は多くないのですが、脳の機能は全てリンクしているはずですので、将来、私の研究において生理研で学んだことが役に立つはずだ、と考えています。
 総研大では海外派遣事業という、学生の留学を支援する予算があり、私はこの事業を利用して2ヶ月間、アメリカのハーバード大学へ留学させていただきました(http://www.soken.ac.jp/education/2-11.html)。海外保険なども含めて総研大から多大なバックアップをしていただき、安心して留学することができました。このような充実したシステムは他の大学では聞いたことがありませんので、総研大の魅力の1つだと思います。私はハーバード大学という世界の最先端の研究所で実験をして、いろいろなことを肌で感じて帰ってきましたが、生理研、基生研、分子研が集まった岡崎3研究所の研究設備はハーバード大学に劣っていません。生理研は、十分な設備とそれを駆使できる優秀な研究者が集まった研究所だと感じています。
 また、岡崎は静かな土地柄で、研究に集中できる良い環境です。研究以外でも、春は桜、夏は花火、秋は紅葉、冬はスノーボード、と日本の代表的な季節ものがとてもきれいで、桜と花火は私が見たことがあるなかでは一番規模が大きいものです。また、徳川家康ゆかりの土地で家康行列があったり、徳川家についての展覧会があったりと、いろいろと楽しんでいます。
 私は生理学研究所での大学院生活をお薦めします。

感覚認知情報研究部門 安田 正治

▼ それでこそ生理研

 僕は今、色の情報処理を司る脳領域の機能を、細胞外記録法によって調べている。用いている実験動物は日本ザルだ。僕は生理研に来る前は、ゾウリムシなどの原生生物の研究を行っていた。一つの細胞で生活の全てをこなす原生生物は、非常に魅力的な研究対象ではあった。しかし、「なぜものが見えるのか?そもそも見えるという感覚は一体何なのか?」という、単純だが本質的な疑問は僕の胸の中で膨らみ続け、生理研の門を叩くに至った。僕のやる気を感じてもらえたのか、ゾウリムシからサルへの転身を、生理研はあっさりと受け入れてくれた。入学後は当然分からない事だらけだった。その道のプロフェッショナル達に囲まれ、自分の不完全さと向き合う日々が続いた(いや、今も続いている)。しかしそんな不完全な自分も、研究室内での濃密なディスカッションに支えられ、鍛えられて、僅かであっても進歩を続けられているように思う。嬉しく思う。それでもやはり、研究に疲れて、やる気が無くなりかける時もある。そんな時に、生理研内で行われるセミナーに元気づけられることが何度かあった。所内で頻繁に行われるこのセミナーで、僕は、岡崎にいながらにして、国内外の一流の研究者達の話を、多分野にわたって聴くことができた。良い研究を見聞きして、軽く興奮して自分の机に戻ってみると、少しくらいの落ち込みなら、明日への活力に変わってしまっているものだ。所内のセミナー以上に励みになったのは、去年初めて開催された学生合同セミナーだ。このセミナーでは生理研、基生研、遺伝研の学生や研究者達が一同に介し、互いの研究を熱く語り合った。酒を飲みながら12時過ぎまで続いた、あの熱気こもるポスター発表は、今でも強く印象に残っている(酒のせいで睡魔も激しかったが)。こうした分野を超えた交流の機会が多くあることは、有り難い。
 生命科学という広い分野の中で、自分の研究がどのような位置にあるのかということを、常に意識しておくことができる。生理研と聞いて、研究ばかりしているのではというイメージを持っている方には意外に聞こえるかもしれないが、セミナーを初めとして、生理研での生活は結構忙しい。セミナーがある、本格的な英会話の授業もある、ラボを超えて行われる輪読会、夏にはトレーニングコースもある、岡崎の花火大会(芸術的!)もある、秋のソフトボール大会もある、おっと春の花見(出店がいっぱい!)も忘れてはいけない。しかしこうした忙しさのなかでも、実験の手が緩められることはなく、質の高い研究が行われている。それが生理研だ。

だから僕は、毎日ひーひー言ってます。

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神経分化研究部門 佐々木 真理 博士後期課程二年

▼ 新たな研究に挑む

 私は現在、分子生物学、細胞生物学、電気生理学的手法を用いて、研究を行っています。総研大は、今年度より修士課程の学生も、受け入れることができるようになりましたが、もともと博士課程のみの大学院大学であったため、学生のほとんどが、博士課程から新たな分野に飛び込んできた人ばかりです。まったく異なる分野から飛び込んできた学生も多く、そういった学生を低い障壁で受け入れてくれる点で、これから新たなことに挑戦しようと考えている人には、とてもいい環境だと思います。実際に私自身も、電気生理学的実験は、これまで行ったことがなく全く初めてでした。学生一人あたりのスタッフの数が多いので、その道の分野の専門の研究者から、多くのことを吸収できます。一方で、学生同士は、研究室、研究所を超えて、ゼミを行ったり、飲み会を行ったりしています。同じモチベーションをもつ仲間同士の交流はとても楽しいものがあります。

 生理研のもう一つの特徴として、頻繁にセミナーや研究会が開かれることがあります。こういったセミナーに積極的に参加することによって、交通費と時間をかけることなく、自分の見聞を広げることができることも大きな魅力の一つだと思います。また、輪読会やセミナーなども、研究室の枠を超えて、参加することもできます。こういった垣根の低い複数研究室間の交流は、生理研のように、ある程度関連性のある分野の研究室が一同に会しているからこそであり、他の大学等では見られない特長だと思います。

 岡崎は、関西や首都圏と比べ、家賃が安めであること、多くの場合奨学金がもらえるので、そういった点でも、場所を変えて研究するのに障壁が低いのではないかと思います。このように大学院学生にとって集中して研究に専念できる優れた環境だと思います。

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統合生理研究施設・高次脳機能研究プロジェクト 坂谷 智也

▼ 目は口ほどにものをいう

 脳の研究を行う上で、科学者は多種多様な実験動物を用います。しかし動物は言葉をしゃべれませんので、ヒトと同じように現在の心境を問いただすことはできません。では実験動物を用いてこころの研究を行うことは不可能なのでしょうか。

「目を踊らせる」「目を伏せる」「目の色をかえる」「目が覚める」…。これらの目に関係する言葉は全て何らかの感情・精神状態を言い表しています。

実際、視線の動きには精神状態が色濃く反映されます。また脳の病的な状態が眼球運動の異常として現れる症例も数多く報告されています。そこで眼球運動の軌跡、反応潜時や精度などを定量的に計測することによって、注意や意欲といった脳の内部状態を科学的な解析の対象とすることが可能となります。

私の所属する伊佐研究室では電気生理学的手法を中心に用いて、サルの行動心理実験とラットの脳スライス実験から、眼球運動を駆動する神経回路を足がかりに、その回路をこころの状態に応じて制御・修飾する神経機構と分子基盤を明らかにしようとしています。

その中で私は、分子と行動をつなぐため、個体レベルでの遺伝子操作が可能なマウスを新たに用いて、眼球運動を指標とする行動実験系を開発しています。これまでにマウスの眼球運動を高速度カメラによってリアルタイムに測定するシステムを開発し、現在は眼球運動に関わる神経回路の機能について、行動遺伝学と電気生理の手法を組み合わせた研究を行っています。今後この実験系が、遺伝子がこころに及ぼす影響、あるいはこころを司る神経機構を知る基礎となり、さらには精神疾患を治療する新薬のスクリーニング系にもつながればと期待しています。

脳の研究を行っていく上では、学部などの既存の枠にとらわれない、広範な知識が必要とされます。その点ここ生理学研究所は様々な分野出身の教官・技官で構成されており、幅広い助言を得ることができます。さらに所内では大学院講義、研究会、セミナー、国際シンポジウム等が頻繁に開催されており、いながらにして国内はもとより海外の一流の研究者から最新の研究動向を知ることができます。個人的には、となりの基礎生物学研究所を含む院生やポスドクで輪講を行っています。興味があれば是非参加してみてください。

この春から機構内に念願の生協が設立され、専門書の入手も容易になりました。同じく機構内にある食堂は毎日豪華メニューです。是非おためしあれ。

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