これまでの主な成果
 
13. サルの脚橋被蓋核のニューロン活動;動機付け、報酬との関係(Kobayashi et al. J. Neurophysiol. 2002)。
Kobayashi Y, Inoue Y, Yamamoto M, Isa T, Aizawa H (2002) Contribution of pedunculopontine tegmental nucleus neurons to performance of visually guided saccade tasks in monkeys. Journal of Neurophysiology, 88:715-731.

脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPTN)は中脳の網様体に位置し、コリン作動性細胞を多数含む核である。(グルタミン酸作動性ニューロンと一部GABA作動性の介在ニューロンも含んでいる)PPTNはレム睡眠生成に重要な核であるが、前頭様や大脳基底核、さらには視床下部から入力を受け、外側膝状体を含む視床諸核群や上丘中間層、橋・延髄網様体や黒質緻密部のドーパミン細胞などにコリン作動性投射を送ることから覚醒時においても何らかの機能を有していると考えられるが、これまで詳細は明らかでなかった。そこで本研究では、視覚誘導性サッケード課題遂行中のサルにおいてPPTNから単一ニューロン活動を記録し、解析を行った。
その結果、PPTNには大別して以下の3種類のニューロン活動が観察された。
  1. 各試行の開始を意味する注視点の点灯に前後して観察される、その後のサッケード課題の成否に関連する活動
  2. サッケード運動の遂行に関連する活動
  3. 報酬に関連する活動
  1. については、一部のニューロンは、注視点の点灯に前後して持続的な活動の増加を示し、その活動はサルがサッケードを行い、報酬を受けるとともに減少した。一部のニューロンは注視点の点灯に対してphasicに応答する活動成分も有していた。この活動の強さはサルの課題の成否に強く関係しており、この活動が低い場合にはサルが引く続くサッケード課題に失敗することが予測できるものであった。
  2. サッケードの遂行に関連する活動については活動を増加させるものと減少させる細胞が見られた。増加する対応は方向選択性を有していたが、特定の方向にs寝たく性を有する細胞が集中して存在しているわけではなかった。
  3. 報酬に関連する細胞については、報酬に引き続き活動するものと、報酬が与えられる時間に選考して活動を増加させる細胞も見られた。後者のニューロンはrandomにfree rewardを与えると報酬のあとに発火したことから、これらのニューロンには報酬を予測する信号も入力していると考えられた。
これらの結果はPPTNが課題の遂行に必要な注意や覚醒状態に関連する信号を有するとともに課題の遂行、報酬情報の処理にも関与していることが明らかになった。
 


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