これまでの主な成果
 
3. 上丘局所神経回路(3)中間層へのコリン作動性入力のシナプス後作用(Sooksawate & Isa, in preparation)
上丘中間層には中脳の脚橋被蓋核(pedunculopintine tegmental nucleus)や背外側被蓋核(dorsolateral tegmental nucleus)に起源するコリン線維が入力し、パッチ状に終末を分布させることが知られている(Graybiel 1977,….)。このコリン作動性入力は上丘中間層ニューロンに作用して、サッケード運動の遂行に何らかの状況依存的な修飾を与えるものと考えられるが、その作用と役割は明らかにされていない。
そこで本研究では、ラットの上丘スライス標本において上丘中間層ニューロンからホールセル記録を行い、アセチルコリンのアゴニストであるカルバコール(30 μM)の投与によって誘発される電流応答を解析した。その結果、記録された122個の上丘中間層ニューロンの応答は以下の5通りに分類された。
  1. 速い内向き電流のみ(12/144)
  2. 速い内向き電流と遅い内向き電流(37/122)
  3. 速い内向き電流と遅い内向き電流と遅い外向き電流(52/122)
  4. 速い内向き電流と遅い外向き電流
  5. 遅い外向き電流のみ(4/122)
そしてこれらの応答は橋内側網様体に予め注入したトレーサーによる逆行性標識によって同定された出力細胞(54個)に限れば、上記2の応答が20個、3の応答が30個であった。
さらにこれらのうちの(1)速い内向き電流、(2)遅い内向き電流、(3)遅い外向き電流応答についてその受容体機構を詳細に解析したところ、

 (1) の速い内向き電流は主にα4β2ニコチン型アセチルコリン受容体を介すること、
(2) の遅い内向き電流はM3ムスカリン型アセチルコリン受容体を介すること、
(3) の遅い外向き電流はM2ムスカリン型アセチルコリン受容体を介し、カリウム電流の増強によること、

が明らかになった。そして大多数のニューロンでの応答が(1)及び(2)の内向き電流の誘発であることから、コリン作動性入力は上丘中間層において、主に興奮性応答を誘発する作用があるものと結論付けられた。
 


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