これまでの主な成果
 
4. 上丘局所神経回路(4)中間層へのコリン作動性入力のシナプス前作用(Li et al. Eur J. Neurosci 2004)
Li F, Endo T, Isa T (2004) Presynaptic muscarinic acetylcholine receptors suppress GABAergic synaptic transmission in the intermediate gray layer of mouse superior colliculus. European Journal of Neuroscience, 20:2079-2088.

本研究では、上丘中間層におけるコリン作動性入力のシナプス前作用に注目して解析を行った。マウスの上丘中間層ニューロンよりホールセル記録を行い、CNQXとAPV存在下で近傍を電気刺激して誘発されるGABAA受容体作動性IPSCに対するムスカリン投与の効果を解析した。
その結果、10 μM ムスカリンを投与すると
  1. IPSCの振幅は約70%まで減少する。
  2. それに伴ってpaired pulse ratioとcoefficient of variationは増大する。
  3. ムスカリンはバス投与されたmuscimolによって誘発されるGABAA受容体電流は抑制しない。 
  4. ムスカリンの投与中、miniature IPSCの頻度は減少するが、振幅の分布は変化しない。
 以上の結果から、ムスカリンによるGABA作動性シナプス伝達の抑制はシナプス前性であることが明らかになった。
さらにこの抑制に関与するムスカリン受容体を同定した。この抑制作用はpirenzepineと4-DAMPによって減弱したが、methoctramineによっては影響を受けなかった。従って、M1ないしはM3型ムスカリン受容体が関与するものと考えられた。
以上の結果から、上丘中間層に対するコリン作動性入力はM1ないしはM3型ムスカリン受容体を介してシナプス前性にGABA作動性シナプス伝達を抑制することが明らかになった。
このことはコリン作動性入力がシナプス後性には主にニコチン受容体とM3型ムスカリン受容体の活性化によって内向き電流を生じさせることとあいまって、上丘中間層ニューロンの活動を亢進させる方向に作用するものと考えられる。
図
 


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