これまでの主な成果
 
5. 上丘局所神経回路(5)浅層GABAニューロンにおけるニコチン受容体活性化の作用(Endo et al. J. Neurophysiol. 2005)
上丘浅層は中脳の二丘傍核(parabigeminal nucleus)よりコリン作動性投射を受ける。これまで上丘浅層におけるコリン作動性入力の役割としてはGABA作動性信の信号伝達を増強することは知られていたが、その詳細なメカニズムは不明であった。
本研究では、Yanagawaらによって開発されたGABAニューロンがGFPの蛍光を発するGAD67-GFP knock in mouseの上丘スライス標本においてGABA作動性ニューロンと非GABA作動性ニューロンからホールセル記録を行い、アセチルコリン(ACh) 1 mMのパフ投与に対する効果を解析した。
このACh投与に対する応答を18個のGFP+ニューロンで調べたところ、17個のニューロンでinward currentが記録された。このinward currentはα-bungarotoxinで抑制されるα7 型subunitによる速い成分とα-connotoxin MVIによって抑制されるおそらくα3β2型subunitによると考えられる遅い成分が見出された。それに対して72個のGFP-ニューロンの記録では、41個のニューロンにおいて速い内向き電流に引き続いて外向き電流成分が観察された。残りの30個では内向き電流が主に観察された。この外向き電流はGABA作動性のシナプス電流であり、興味深いことにTTX存在下でも観察された。従ってこのGABA作動性電流はAChによって活性化されたGABAニューロンのシナプス前terminalからのGABAの放出によって誘発されたものと考えられる。これまでの解剖学的知見から、上丘浅層においてはGABA作動性ニューロンが非GABA作動性ニューロンの樹状突起とdendro-dendritic synapseを形成することが知られているので、今回の結果は図のようにシナプス前樹状突起に存在するα7, α3β2 subunitが活性化されたことでGABAの放出が促進されたものと考えられる。
上丘浅層のGABA作動性ニューロンは広い範囲に樹状突起を有するhorizontal cellであるので、このようなAChによるGABA作動性シナプス伝達の促進は側方抑制の増強によるコントラストの増強作用があると推測される。
 


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