神経細胞をシミュレートするというと、「ほんとに?それってどのくらい本物っぽいの?」と思う方が少なからずいます。しかし
Hodgkin-Huxley model と呼ばれる理論を使うと実際にパッチクランプ法等で実際記録した記録とほとんど同じ神経活動をシミュレートすることができます。それもそのはず、神経細胞の電気的活動のこれまで多くの研究は
Hodgkin-Huxley model に従うことがわかっているのです。
1つめは"リアルタイム性"です。Hodgkin-Huxley model を用いると非常にリアリスティックな人工神経細胞を作ることができますが、一方で非常にたくさんの計算を必要とします。もちろんたくさんの計算時間が必要となります。しかし実際の神経細胞とつなげるためには、計算時間は短くなければならないのです。リアルタイム(実時間)で動かないといけません。そのような高速の計算はこれまでのコンピュータでは不可能でした。しかも普通のPC(たとえば windows)などは数値計算能力がそれほど早くはないので、実現は難しいところがあります。その問題を我々はDSPと呼ばれるデジタル信号処理に特化したプロセッサを用いることによって解決しています。
2つめは我々の測定系を使うには、パッチクランプ法などの電気生理学的な知識・技術と、Hodgkin-Huxley
model の理論的な理解と実践、そしてプログラミングの知識・技術が必要です。これらの知識や技術を全部習得するのはそれほど簡単なことではないですし、実際に世界的にみてもこれらがこなせる人はそうはいません。しかし我々の研究室には、これら両方の知識と技術があるのです。