電位依存性カルシウムチャネルの異常により、失調症(よたよた・ふらふらする)やてんかんが起こることが知られていますが、なぜそのような症状が起きてくるかに関しては、ほとんど研究がなされていませんでした。私たちは、遺伝性失調症マウスの小脳の神経回路を電気生理学的に系統的に解析しています。
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小脳プルキンエ細胞の活動電位発火パターン。脱分極電流に対して、正常マウスでは(左)バースト状の発火パターンを示すが、rollingマウスでは(右)バースト状の発火が途絶えてしまう。 |
またてんかんの発生機序を明らかにする手がかりとして、てんかんをもつマウスの解析も行っています。てんかんは大脳皮質の多くの神経細胞が一度に過剰興奮の状態になことにより起こります。
カルシウムチャネルに異常を持つtotteringマウスは、生後3週ごろからてんかんの一種である欠神発作を示します。欠神発作の原因は、大脳皮質と視床を相互に結ぶ神経ネットワークの異常により生ずると考えられてきましたが、その詳細は不明でした。私たちの最近の研究により、totteringマウスにおいて大脳皮質Ⅳ層錐体細胞へ入力する抑制性シナプス伝達が減弱していることが明らかになりました。大脳皮質Ⅳ層錐体細胞は、視床から直接抑制を受けるのではなく、抑制性介在ニューロン介するフィードフォワード抑制を受けます。totteringマウスでは、この視床-大脳皮質投射のフィードフォワード抑制機能に著明な障害があることが示されたわけです。
update 02-May-2006