
Kv4.2 - DPP10 チャネル複合体の量体数比の一分子イメージングによる解析
4個のサブユニットからなるKv4.2 チャネルは、副サブユニットKChIPおよびDPPと分子複合体を形成することが知られていますが、その量体数比(ストイキオメトリー)は、決定していませんでした。研究グループは、蛍光タンパク質を付加したサブユニットをXenopus 卵母細胞に発現させ、全反射照明下で一分子イメージングを行い、蛍光の消退ステップ数を数えることにより、複合体中に含まれるサブユニットを数える実験を行ってきました。これまでに、Kv4.2とKChIP4の複合体を対象として解析を行い、両者の相対的な発現レベルの変化に応じて、量対数比が4:1から4:4まで確率的に変化することを観察しました。すなわち、4量体のKv4.2 の4カ所の結合部位にKChIP4が独立に結合することが明らかになりました (Kitazawa et al. J Biol Chem (2014)) 。
本研究では、一分子イメージングによるサブユニットカウント法により、Kv4.2とDPP10の複合体の量対数比を解析しました。その結果、Kv4.2/ KChIP4の場合とは異なり、両者の相対的な発現レベルを変化させると、量対数比の分布は変化するものの、いずれの場合も、量対数比4:2の分子が多く見られることを観察しました。すなわち、両者の結合は4カ所の結合部位に独立に起こるのではなく、4:2にpreference があることが明らかになりました。さらに、DPP10に有する大きな細胞外領域を欠失させると、4:3, 4:4の量対数比の複合体の形成が増加することが観察されたため、DPP10は、Kv4.2に、図Cのaのような様式で結合いていること、DPP10の細胞外領域の立体障害が4:3, 4:4の形成を阻害していることが示唆されました。
さらに、Kv4.2/ KChIP4 複合体形成に対するDPP10の寄与、KV4.2/DPP10複合体形成に対するKChIP4の寄与について、2者複合体と3者複合体を比較することにより解析しました。その結果、Kv4.2に対する、KChIP4の結合とDPP10の結合は、相互に干渉しないことが明らかになりました。
論文情報
Masahiro Kitazawa, Yoshihiro Kubo and Koichi Nakajo (2015)
Kv4.2 and Accessory Dipeptidyl Peptidase-like Protein 10 (DPP10) Subunit Preferentially Form a 4:2 (Kv4.2:DPP10) Channel Complex
J. Biol. Chem. jbc.M115.646794. First Published on July 24, 2015, doi:10.1074/jbc.M115.646794
問い合わせ先
生理研 神経機能素子研究部門
中條 浩一 (現 大阪医科大学医学部生理学教室)、久保 義弘