
腎臓のろ過装置の形成過程が明らかに
腎臓の糸球体にある足細胞は、毛細血管の表面を細かな突起(足突起)で覆っており、血液を濾過して尿を作る際のフィルターの役割を果たします。血液濾過装置として巧妙に発達した足細胞がどのように形成されてくるかは、これまでそれを調べる方法がなく、断片的にしか理解されていませんでした。
近年開発された連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)は、試料を削りながらその表面に現れる構造を連続して記録してゆく電子顕微鏡です。得られたスライス像を立体的につなぎ合わせることによって、ナノスケールの解像度で試料の三次元構造を明らかにできます。
本研究では、このSBF-SEMを用いて足細胞の連続スライス像を撮影し、これを立体再構築することによって、その形成過程を詳細に解明することに成功しました。
足細胞から伸びてくる足突起は、“初期、未熟、成熟”の3つ段階を経て出来上がることがわかりました。初期足突起どうしの間には特に構造はみられませんが、未熟足突起になると突起間にタイト結合という細胞間結合装置が現れます。さらに、成熟足突起になると、タイト結合はスリット膜と呼ばれる構造に置き換わり、このスリット膜がフィルターとして働くようになります。
この研究により、足細胞の詳細な発達過程が初めて明らかになりました。これらの知識は腎臓の再生医療や腎臓病治療薬の開発につながると期待されます。
共同研究情報
順天堂大学医学部:市村浩一郎、角田宗一郎、川崎優人、宮木貴之、野波隆寛、小池正人、坂井建雄
名古屋大学超高圧電子顕微鏡施設:中尾知代、榎本早希子、荒井重勇
科研費や補助金・助成金情報
科研費(15K18960)
文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(S1311011、S1101009)
生理研計画共同利用研究
名古屋大学ナノテクノロジープラットフォーム
リリース元
Title: Morphological process of podocyte development revealed by
block-face scanning electron microscopy
Authors: Koichiro Ichimura, Soichiro Kakuta, Yuto Kawasaki, Takayuki Miyaki, Takahiro Nonami, Naoyuki Miyazaki, Tomoyo Nakao, Sakiko Enomoto, Shigeo Arai, Masato Koike, Kazuyoshi Murata, and Tatsuo Sakai
Journal: J. Cell Sci. (2016)
Issue: Jun 29. pii: jcs.187815. [Epub ahead of print]
URL: http://jcs.biologists.org/content/early/2016/07/12/jcs.187815.long
DOI: doi: 10.1242/jcs.187815