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深海に住むらせん菌の構造を超高圧電子顕微鏡で解明

2016年07月20日 研究報告

 深海にはまだ私たちの知らない生物がたくさんいると考えられています。特に深海に住む微生物は、生物資源利用の点のみならず生命の起源を探る上で重要な研究対象です。

 本研究では、2010年に八丈島の南の明神海丘で、水深1,200 mの海底から採取した泥土に含まれていた試料から、特徴的ならせん型をした微生物を発見しました。そして、その超微形態を超高圧電子顕微鏡を使って三次元で解析し、さらにそのストラクトーム解析(細胞小器官の統計解析)から、深海微生物に特徴的と思われるその性状を明らかにしました。

 試料は、深海と陸上という大きな環境変化の中で微生物の構造をできるだけ保持するために、採取後船上で直ちにグルタールアルデヒドで化学固定し、これを研究室に持ち帰ってからさらに急速凍結置換固定をするという新しい方法を用いました。我々は、この試料の中から、特徴的ならせん型をした微生物を発見し、これを「明神らせん菌」と名付けました。

 明神らせん菌は、鞭毛などを持たない幅約0.5 μm長さ約1.8 μmのコイルもしくはネジ状の外形をしており、これには右巻きと左巻きの両方がみられました。内部構造は、外側から細胞膜、厚い繊維層、リボソームを含む細胞質、内部繊維層からなっていました。

 解析の結果、他の細菌に比べてリボソームの数が10分の1以下であったことから、これは深海での遅い成長スピードを反映しているものと考えられました。

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共同研究情報

千葉大学真菌医学研究センター:山口正視、Mohammad Shorif Uddin、知花博治 

結核予防会結核研究所:山田博之 

名古屋大学超高圧電子顕微鏡施設:樋口公孝、山本悠太、荒井重勇 

(株)システムインフロンティア:森裕子、古河弘光 

 

科研費や補助金・助成金情報

日本学術振興会(日本—バングラディシュ)

生理研超高圧電子顕微鏡共同利用研究

名古屋大学ナノテクノロジープラットフォーム

リリース元

Title: High-voltage electron microscopy tomography and structome analysis of unique spiral bacteria from the deep sea.

Authors: Masashi Yamaguchi, Hiroyuki Yamada, Kimitaka Higuchi, Yuta Yamamoto, Shigeo Arai, Kazuyoshi Murata, YukoMori, Hiromitsu Furukawa,Mohammad Shorif Uddin, Hiroji Chibana

Journal: Microscopy (2016)

Issue: First published online: May 26, 2016

URL: http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283616001169

DOI: doi: 10.1093/jmicro/dfw016

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