すべて

検索

マウスノロウイルスのタンパク質感染受容体を発見

2016年09月30日 研究報告

 生理学研究所の村田和義准教授の共同利用研究グループは、これまで不明であったマウスノロウイルスの感染受容体が、細胞の表面にあるタンパク質CD300lf, CD300ldであることを発見しました。そして、この発見により、マウスノロウイルスの感染の仕組みを解明しました。

 これまで、マウスノロウイルスの感染にはシアル酸、ヒトノロウイルスの感染には血液型を決定する糖鎖(組織血液型抗原:HBGA)など、糖鎖が感染受容体の役割を果たすと考えられていました。しかし、これらの分子を細胞表面に発現させてもノロウイルスが細胞に感染できるようになりませんでした。

 研究グループは、マウス由来のRAW細胞という培養細胞と新しく開発されたCRISPER/Cas9ゲノムワイドノックアウトシステムという遺伝子編集技術を組み合わせて、レセプターを探しました。RAW細胞の種々の遺伝子をノックアウトしてから、RAW細胞へマウスノロウイルスを感染させました。RAW細胞は、元々マウスノロウイルスのレセプターを持っているため、マウスノロウイルスが感染すると死んでしまいます。しかし、CRISPER/Cas9ゲノムワイドノックアウトシステムで、レセプター遺伝子がノックアウトされると、マウスノロウイルスが感染できない細胞になり、生き残るのです。本研究グループは、生き残った細胞のどの遺伝子がノックアウトされたのかを調べることによって、細胞の表面にあるタンパク質CD300lf, CD300ldがマウスノロウイルスレセプターであることを発見しました。

 本来、マウスノロウイルスはネズミ以外の動物には感染しませんが、このレセプターを、ヒト、サル、ハムスター、ネコの細胞に導入すると、これらの細胞にもマウスノロウイルスが感染し、増殖できるようになることも明らかにしました。

 生理研では、マウスノロウイルスのキャプシド(殻)の構造をクライオ電子顕微鏡で解析し、これをもとに感染受容体CD300lf,およびCD300ldの結合部位と構造が明らかにされました(図1)。

 本研究の成果は、今後ノロウイルスの感染を防ぐ方法、ノロウイルスワクチン、ノロウイルス治療薬、ノロウイルス消毒薬開発への応用につながると期待されます。

yoshiga_murata.jpg

 

図1 マウスノロウイルスS7株(MNV-S7)キャプシドと感染受容体CD300lfとの相互作用

共同研究情報

芳賀慧、藤本陽、戸高玲子、村上耕介氏、横山勝氏、Doan Hai Yen、片山和彦 国立感染症研究所

中西章 国立長寿医療センター

三木元博 デンカ株式会社

 

科研費・補助金、助成金情報

新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(厚生労働省)

文部科学省科学研究費助成事業

生理研計画共同研究

 

 

 

リリース元

Functional receptor molecules CD300lf and CD300ld within the CD300 family enable murine noroviruses to infect cells
Kei Haga, Akira Fujimoto, Reiko Takai-Todaka, Motohiro Miki, Yen Hai Doan, Kosuke Murakami, Masaru Yokoyama, Kazuyoshi Murata, Akira Nakanishi, and Kazuhiko Katayama
Journal: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2016) early edition http://www.pnas.org/lookup/doi/10.1073/pnas.1605575113

DOI: 10.1073/pnas.1605575113

関連部門

関連研究者