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神経細胞の軸索の根元の構造は脳発達に伴い複雑になる

2017年02月02日 研究報告

 細胞には細胞骨格と呼ばれる建物の鉄骨の様な構造がありますが、細胞骨格は単に細胞の構造を内部から補強する役割だけではなく、細胞の形態形成、分裂、運動、極性、小胞輸送など様々な細胞内の機能を果たしています。神経細胞の軸索において、よく知られている細胞骨格は微小管であり、多種多様なタンパク質などが積荷として微小管に沿って輸送されています。近年、軸索の表面直下には規則的に並んだはしごの様な格子状細胞骨格が構築されていることが報告されました。この構造は樹状突起にはなく、軸索だけにある特徴的な構造です。軸索にのみ存在する構造であることから軸索において特別な働きをしていると考えられますが、この特殊な細胞骨格の役割は分かっていません。

 今回、自然科学研究機構 生理学研究所の吉村武助教(研究当時、現 大阪大学助教)らの研究グループは、超高解像度顕微鏡などを用いて脳発達期における軸索の根元の細胞骨格を構成するβIVスペクトリンの発現パターンを詳細に調べました。その結果、大きさの異なるβIVスペクトリンが脳の発達に伴って劇的に増加し、それが軸索の根元の構造を複雑にしていることを発見しました。

 脳は経験や加齢、病気などにより絶えず構造的、機能的に変化しています。この脳の変化には、神経細胞同士のつなぎ目であるシナプスが関与していることがすでに知られていましたが、それに加えて最近の研究から、軸索根元の構造の変化も脳の変化に関わっていることが分かりつつあります。本研究結果から、βIVスペクトリンの発現パターンが変化することで軸索の根元の構造が作り変えられ複雑になることが明らかとなりました。この成果は、軸索の特別な細胞骨格の役割の解明の手がかりになるだけでなく、軸索の根元が関わるてんかんなどの病態解明や治療法の開発に繋がることが大いに期待されます。

 

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共同研究情報

研究者名:Sharon R. Stevens, Matthew N. Rasband

研究機関名:ベイラー医科大学(アメリカ合衆国)

研究者の所属講座名、部門名:Department of Neuroscience

 

研究者名:Cristophe Leterrier

研究機関名:エクス=マルセイユ大学(フランス)

研究者の所属講座名、部門名:Research Center for Neurobiology and Neurophysiology

 

研究者名:Michael C. Stankewich

研究機関名:イェール大学(アメリカ合衆国)

研究者の所属講座名、部門名:Department of Pathology

 

科研費や補助金・助成金情報

 

National Institutes of Health (NIH) grants NS044916 および the Dr. Miriam and Sheldon G. Adelson Medical Research Foundation

リリース元

Title: Developmental Changes in Expression of βIV Spectrin Splice Variants at Axon Initial Segments and Nodes of Ranvier.

Authors: Takeshi Yoshimura, Sharon R. Stevens, Cristophe Leterrier, Michael C. Stankewich, Matthew N. Rasband

Journal: Frontiers in Cellular Neuroscience

Issue: Volume 10, Article 304

Date: January 10, 2017

URL (abstract): http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fncel.2016.00304/full

DOI: 10.3389/fncel.2016.00304

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