
ドラッグデリバリー担体として期待されるヒドロゲル微粒子の水和した構造をクライオ電子顕微鏡で観察
ヒドロゲル微粒子は直径が1ミクロン(1/1000 mm)以下の高分子でできた水溶性の粒子で、外部環境の変化に応じて体積などを可逆的に変化させることができることから、薬剤を体内の目的の場所に運搬するドラッグデリバリー担体などへの応用が期待されています。信州大の鈴木らの研究グループは、このような機能性ゲル微粒子の高度な合成技術を確立し、薬剤やタンパク質と相互作用する電荷を帯びた部位や疎水性領域を、ゲル微粒子の中心部、ゲル微粒子の表面、ゲル微粒子の半球へと自由に局在化させることに成功しています。しかし、実際にこれらヒドロゲル微粒子の特定の領域に目的の薬剤やタンパク質を取り込ませて、生体内の目的の場所で放出させるためには、薬剤やタンパク質と相互作用する官能基の微粒子内での空間配置を微粒子が水に解けた状態で調べる必要があります。
今回、生理研との共同研究で、2種類のヒドロゲル微粒子を急速凍結して薄いガラス状の氷の膜に閉じ込め、生理研が保有するクライオ電子顕微鏡を用いて撮影することにより、水和した状態に近いヒドロゲル微粒子の構造を観察することに成功しました。本結果はドラッグデリバリー担体などとしてヒドロゲル微粒子を正確にデザインするために必要な構造の情報を与えました。
2種類のヒドロゲル微粒子のクライオ電子顕微鏡像。A) NF5-S100 B) NF40-S100。
共同研究者情報
信州大学総合理工学研究科 渡邊拓巳、小林千玲、呉羽拓真、鈴木大介
生理学研究所 ソン・チホン、村田和義
科研費・補助金、助成金情報
MEXT 科研費 26620177, 26102517
先端バイオイメージング支援プラットフォーム 16A-113-E08
リリース元
Title: Impact of Spatial Distribution of Charged Groups in Core Poly(N‑isopropylacrylamide)-Based Microgels on the Resultant Composite Structures Prepared by Seeded Emulsion Polymerization of Styrene
Authors: Takumi Watanabe, Chiaki Kobayashi, Chihong Song, Kazuyoshi Murata, Takuma Kureha, and Daisuke Suzuki
Journal: Langmuir
Issue: 32:12760-12773
Date: 2016.12.4 published
URL (abstract): http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.langmuir.6b03172
DOI: 10.1021/acs.langmuir.6b03172