
シアノファージが宿主のシアノバクテリアに吸着・感染する瞬間をクライオ電子顕微鏡で可視化
シアノファージの一種P-SSP7はプロクロロコッカスと呼ばれる海洋性シアノバクテリアを宿主とするウイルスです。このシアノファージは、宿主の間で感染を繰り返すことによりシアノバクテリアの光合成機能を維持していると考えられています。しかし、P-SSP7は直径が60ナノメートル(10万分の6ミリメートル)と非常に小さいため、これらがプロクロロコッカスの表面に吸着して感染する様子は、通常の顕微鏡では観察することができません。
今回、生理研との共同研究では、P-SSP7をプロクロロコッカスに感染させて、時間を追って試料を急速凍結し、これをクライオ電子顕微鏡トモグラフィーという方法で立体的に可視化しました(図1)。そして、P-SSP7が宿主であるプロクロロコッカスに吸着して感染する瞬間を捉えることに成功しました。
結果、P-SSP7はその球状の本体から伸びる1本のテールの周りに生えた細い繊維状構造(テールファイバー)を使って宿主を認識し、吸着することがわかりました。そしてさらに、テールファイバーの構造を変化させてテールを宿主にしっかりと結合させ、テールの先端から伸びてくる筒状の突起構造を使ってシアノファージのDNAを宿主細胞内に注入することがわかりました。
本成果は、遺伝子DNAを効率的に目的の細胞内に送り込む分子シャトルのようなものの開発のヒントになると期待されます。
図1 プロクロロコッカスに感染したシアノファージP-SSP7のクライオ電子顕微鏡トモグラフィー。薄緑:P-SSP7、赤:バクテリアの細胞壁。
共同研究者情報
中山大学:Qinfen Zhang
ベイラー医科大学: Jesús Gerardo Galaz-Montoya, Caroline Fu, Michael F. Schmid, Wah Chiu
マサチューセッツ工科大学:Maureen L. Coleman, Marcia S. Osburne, Matthew B. Sullivan, Sallie W. Chisholm
科研費・補助金、助成金情報
NIH (P41GM103832)
Robert Welch Foundation (Q1242)
NSF (OCE- 0425602)
Gordon and Betty Moore Foundation (495.01;3790.01)
リリース元
Title: Visualizing Adsorption of Cyanophage P-SSP7 onto Marine Prochlorococcus
Authors: Kazuyoshi Murata, Qinfen Zhang, Jesús Gerardo Galaz-Montoya1, Caroline Fu, Maureen L. Coleman, Marcia S. Osburne, Michael F. Schmid, Matthew B. Sullivan, Sallie W. Chisholm & Wah Chiu
Journal: Scientific Reports
Issue: 7:44176
Date: 2017.3.10 published
URL (abstract): http://www.nature.com/articles/srep44176
DOI: 10.1038/srep44176