
ミドリゾウリムシにおけるミトコンドリアと共生クロレラとの特異的な結合
水辺に生息する単細胞生物のミドリゾウリムシは、細胞内に多数のクロレラと呼ばれる藻類を共生させています。また、宿主細胞内で生息するクロレラはPV膜と呼ばれる膜で覆われており、この膜を通して宿主とやり取りを行っていると考えられています。しかし、その仕組みについてほとんどわかっていません。本研究ではPV膜と宿主細胞との関係を、通常の電子顕微鏡に加えて生理研の超高圧電子顕微鏡を用いて三次元的に可視化して調べました。
その結果、ミドリゾウリムシでは共生クロレラのPV膜が宿主のミトコンドリアと直接またはクサビのような構造を介して固く結合していることを世界で初めて明らかにしました。さらにそのミトコンドリアは、小胞体を介して周辺のミトコンドリアとも大きなネットワークを形成していることがわかりました。
このような細胞内共生の例としては、ネコの細胞内に寄生するトキソプラズマなどが知られていますが、この場合もトキソプラズマが宿主のミトコンドリアや小胞体と直接結合していることがわかっています。このことから、ミドリゾウリムシとクロレラの共生関係もこれと類似のメカニズムにより行われているものと考えられました。本発見は藻類の細胞内共生のみならず生物一般における共生メカニズムを解明する上で重要なヒントを与えると考えられました。
図1 超高圧電子顕微鏡トモグラフィーにより可視化されたミドリゾウリムシのミトコンドリア(ピンク)と細胞内共生藻クロレラ(ミドリ)との相互作用
共同研究情報
生理学研究所:ソンチホン、村田和義
神戸大学:洲崎敏伸
科研費、補助金・助成金情報
日本学術振興会科研費 (23117009; 26340072)
生理研超高圧電子顕微鏡共同利用実験
リリース元
Title: Intracellular symbiosis of algae with possible involvement of mitochondrial dynamics
Authors: Chihong Song, Kazuyoshi Murata, & Toshinobu Suzaki
Journal: Scientific Reports
Issue: 7:1221
Date: 2017.4.27 published
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-017-01331-0
DOI: 10.1038/s41598-017-01331-0