
マウス海馬苔状繊維シナプスの超微形態変化にみられるアファディン分子の多様な役割
脳の海馬は記憶と学習の鍵となる部位で、そこでは興奮性と抑制性の神経細胞がシナプスを介して局所的な神経回路を形成し、その出力を制御しています。しかし、その形成機構や機能の発現機構の多くはまだ良くわかっていません。本研究では、細胞間接着関連分子の一つであるアファディンをノックアウトしたマウスを作製し、これを用いて海馬苔状線維シナプスの超微形態変化を生理研の連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)により解析しました。
その結果、アファディンノックアウトの海馬苔状線維シナプスでは形態構造が著しく変化し、苔状線維終末による樹状突起スパインの占有率の減少、プンクタアドヘレンシアジャンクション(PAJ)の減少および形状変化、そしてシナプス小胞が減少することなどが分かりました(図1)。
このことから、アファディン分子は、シナプス前後部においてシナプス構成分子の集積に重要な役割を果たすことが分かったとともに、マウス海馬苔状繊維シナプスの形成においても重要な役割を果たしていることが示唆されました。
本成果は、脳における記憶や学習のメカニズムを明らかにする研究に重要な知見を与えるだけでなく、てんかんや統合失調症の治療法の開発にも役立つと期待されます。
リリース元
Title: Multiple roles of afadin in the ultrastructural morphogenesis of mouse hippocampal mossy fiber synapses
Authors: Sai K, Wang S, Kaito A, Fujiwara T, Maruo T, Itoh Y, Miyata M, Sakakibara S, Miyazaki N, Murata K, Yamaguchi Y, Haruta T, Nishioka H, Motojima Y, Komura M, Kimura K, Mandai K, Takai Y, Mizoguchi A
Journal: Journal of Comparative Neurology
Issue: 525:2719–2734
Date: 2017.5.8 accepted
URL: http://doi.wiley.com/10.1002/cne.24238
DOI: 10.1002/cne.24238