すべて

検索

聴覚ペア刺激抑制の新しいパラダイム

2017年07月24日 研究報告

 音を500ミリ秒ほど離して連続的に提示すると、二つ目の音に対する脳の反応が減弱することが知られています。統合失調症や発達障害などの病気ではこの応答減弱が小さくなります。しかしながら、500ミリ秒という設定が適切かどうか検討されたことはありませんでした。また、この抑制がどのような機序で起こるのかも不明です。

 今回私たちは、新しい刺激パラダイムを使ってどの程度の時間間隔をあけると最も強く抑制がかかるのかを脳磁計を使って検討しました。またそれを脳波計で測定可能か調べました。脳波計は脳磁計よりも広く普及していて、より簡便に測定できるからです。

 人間の脳は音の変化に対して敏感に反応することを利用して、脳磁計を用いて脳の電気活動の測定を行いました。図Aにあるように、65dB(デシベル)の背景音の中に、80dBのテスト音とその300-800ミリ秒前に80dBの先行音を挿入しました。このテスト音の反応の大きさをそれぞれ測定した結果、図Cにあるように600ミリ秒で最も強い応答減弱があることが分かりました。図Bが600ミリ秒の時の脳反応です。脳反応の減弱は非常に弱い先行音でも観察され、また短い間隔(300~400ミリ秒)では600ミリ秒と比べて減弱の程度が弱いことから、この現象は介在細胞(インターニューロン)による積極的な抑制を反映するものと考えられました。脳波計を用いて短い計測時間でこの抑制過程を検出する方法を確立しましたので、今後は臨床場面での応用が期待されます。現在のところ、介在細胞の機能を計測する方法はありません。

 

竹内NIPS RES.jpg

共同研究者情報

竹内伸行、西原真理、兼本浩祐:愛知医科大学

杉山俊介:岐阜大学

科研費・補助金、助成金情報

科研費(基盤C)、ImPACT(乾幸二)

リリース元

Title: New paradigm for auditory paired pulse suppression
Authors: Takeuchi N, Sugiyama S, Inui K, Kanemoto K, Nishihara M
Journal: PLoS ONE
Issue: 12:e0177747
Date: May 18, 2017
URL: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0177747
DOI: doi:10.1371/journal.pone.0177747. eCollection 2017.

関連部門

関連研究者