
耳鳴り患者の聴覚野におけるマクロレベルでの周波数特異性の低下
耳鳴りは非常に患者数の多い疾患なのですが、そのメカニズムに関してはいまだに不明な点が多くあります。
本研究では、本人にしか聞こえない耳鳴りを客観的に計測することはできないかと考えて行いました。今回の研究に協力して頂いたのは、左右の耳の聞こえがほぼ同じなのに、片側の耳に耳鳴りが聞こえている患者です。脳磁計というヒトの脳の活動を、身体に害を与えることなく計測できる器械を用いて、研究を行いました。
実験では静かな時と騒々しい時に音を耳鳴りの聞こえる耳、または聞こえない耳に聞かせます。そして、耳鳴りが聞こえる耳と耳鳴りが聞こえない耳で音を聞いた時の脳活動を比較したところ、耳鳴り周波数の音に対する脳の反応は、静かな環境では耳鳴りが聞こえる耳の方が聞こえない耳より大きくなっていたのに対して、騒々しい環境下では逆に耳鳴りの聞こえる耳の方が聞こえない耳より小さくなっていました。
この研究結果は、耳鳴りの聞こえる耳ではお互いの神経活動を抑制させる神経ネットワークの働きが低下していることを示唆しています。現在は耳鳴りを客観的に診断する方法はありませんが、本研究は耳鳴りの客観的な評価方法の開発につながると考えられます。また、耳鳴りの発症メカニズムの解明に貢献することで将来の耳鳴りの治療法の開発に繋がるのではないかと考えております。
共同研究者情報
研究者名:関谷健一、高橋真理子、村上信五
研究機関名:名古屋市立大学大学院医学研究科
研究者の所属講座名、部門名:耳鼻神経感覚医学
科研費・補助金、助成金情報
岡本秀彦、科研費若手B(26861426).
リリース元
Title: Broadened population-level frequency tuning in the auditory cortex of tinnitus patients.
Authors: Sekiya, K. Takahashi, M. Murakami, S. Kakigi, R. Okamoto, H.
Journal: J Neurophysiol
Issue:117
Date:Mar 1
URL (abstract): http://jn.physiology.org/content/117/3/1379.long
DOI: 10.1152/jn.00385.2016.