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手指の巧緻的な運動時の感覚情報の働きの解明

2018年01月29日 研究報告

 手指は人体の中で最も器用な部位です。手指の器用な運動は、適切なタイミングで筋肉が協調して動くことによって成り立っています。このような運動の背景には、手指からの感覚情報を基にして運動の指令を生成し、筋肉を協調して収縮させていることが挙げられますが、巧みな運動時において脳内で行われている感覚情報と運動情報の働きについては不明な点が多く残されていました。本研究は、生理学研究所に設置されている脳磁図を用いて、手指の様々な運動時における脳活動を計測し、手指の運動をコントロールしている時の感覚情報の働きを調べました。

 実験では、手指を用いて物体を器用に扱う運動時(手掌の上で2個のボールを時計回りに回転させる)や手指の単純な運動時(ボールを握るだけ)における脳活動を記録しました。運動時には身体部位の状態をモニタするために、筋肉や皮膚からの情報が神経を通して脳に伝わり処理されています。今回、我々が注目したものは、筋肉や皮膚からの感覚情報の処理に関わる脳活動(体性感覚誘発磁場)です。この体性感覚誘発磁場について、手指の運動時と安静時を比較すると、これまでの報告では、運動している筋からの感覚情報は、運動の妨げにならないように抑制されることが報告されていました。本研究においても、ボールを握るだけの単純な運動時には、体性感覚誘発磁場は小さくなり、感覚情報は抑制されていました。しかし、手掌の上でボールを回転させる巧緻的な運動時には、手指からの感覚情報は抑制されず、感覚情報の処理に関わる脳活動は増大することが明らかになりました。

 今回の研究成果は、手指が巧みな運動を行うことが出来る背景には、手指の運動を調節するための感覚情報の働きが重要であることを示しています。運動のコントロールに関する感覚情報の働きを解明することによって、巧緻的運動のトレーニング法や運動障害が残る患者さんへのリハビリテーション法の確立に役立つことが期待されます。

 

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共同研究者情報

研究者名:和坂俊昭
研究機関名:名古屋工業大学
研究者の所属講座名、部門名:工学部電気・機械工学科

科研費・補助金、助成金情報

基盤研究(C):運動イメージの形成に関わる神経基盤の解明と運動学習への応用
自然科学研究機構生理学研究所共同利用研究(生体機能イメージング共同利用実験)


 

リリース元

Title: Facilitation of information processing in the primary somatosensory area in the ball rotation task

Authors: Toshiaki Wasaka, Tetsuo Kida, Ryusuke Kakigi

Journal: Scientific Reports

Issue: 7(1) 15507

Date: Nov 14

URL (abstract): http://www.nature.com/articles/s41598-017-15775-x

DOI: 10.1038/s41598-017-15775-x.

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