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新たな鎮痛薬創薬シーズの発見 ~4-イソプロピルシクロヘキサノールは痛みに関わるイオンチャネルを阻害する~

2018年02月28日 研究報告

 痛みを伝える神経にはTRPV1というタンパク質が存在します。TRPV1は、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンによって活性化し、これが痛みの引き金となります。一方で、TRPV1を発現している神経にはアノクタミン1という別のタンパク質も発現しています。このTRPV1とアノクタミン1は結合しており、TRPV1が活性化するアノクタミン1もほぼ同時に活性化されます。この二つの活性化は両方とも痛みにつながる神経興奮を引き起こします。つまり、このふたつの痛みスイッチがオンになるため、強い痛みが生じるのです。

 私たちは今回の研究で、清涼剤として使われているメントール(ミント成分)がこのふたつのスイッチをオフにすることを発見しました。さらなる検討の結果、メントールの構成成分であるイソプロシクロヘキサンという化合物があれば、アノクタミン1を抑制できることも分かりました。加えて、イソプロピルシクロヘキサンに構造が似ていますが、より水に溶けやすくなった4-イソプロピルシクロヘキサノールは強くTRPV1とアノクタミン1を抑制しました。興味深いことに、痛み神経を刺激してしまうかもしれないメントールと違って、4-イソプロピルシクロヘキサノールが痛みに関わるタンパク質を刺激することはありませんでした。つまり、4-イソプロピルシクロヘキサノールには痛み止めとしての可能性が見出されたのです。実際に、4-イソプロピルシクロヘキサノールをマウスに注射したところ、カプサイシンによる痛みが弱まることもわかりました。

 将来、この発見をもとにして使いやすい痛み止めが開発されると期待されます。

 

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共同研究者情報

研究者名:古江秀昌
研究機関名:兵庫医科大学
研究者の所属講座名、部門名:神経生理部門
 

科研費・補助金、助成金情報

科研費(若手B)、加藤記念バイオサイエンス振興財団
 

リリース元

Title: 4-isopropylcyclohexanol has potential analgesic effects through the inhibition of anoctamin 1, TRPV1 and TRPA1 channel activities

Authors: Yasunori Takayama, Hidemasa Furue, Makoto Tominaga

Journal: Scientific Reports

Issue: 7

Date: Feb 22, 2017

URL (abstract): https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28225032

DOI: 10.1038/srep43132

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