クライオ電子顕微鏡によるマルセイユ科巨大ウイルスの構造解析
巨大ウイルスとは、一般的に最小の生物と言われているマイコプラズマ(0.2 nm*1)よりも大きなウイルスのことを指します。構造学的にもより細胞性生物に近い特徴を示すことから、ウイルスと細胞性生物との境界にいる存在として注目されています。
今回、我々の共同研究グループは、新しく発見された巨大ウイルスの一つメルボルンウイルス(MelV)の詳細な構造をクライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)により明らかにしました。MelVはメルボルン郊外の淡水池で発見された巨大ウイルスで、新種の巨大ウイルスファミリーであるマルセイユウイルス科に分類されました。我々の構造解析の結果、直径が約250 nmで、T=309という非常に大きな正二十面体構造をした殻(カプシド)で覆われていることがわかりました。また、カプシド内にはカプシドの頂点に固定された脂質二重膜があり、ウイルスゲノムはこれに包まれていました。MelVで最も特徴的なのは、粒子内に我々がLDBと名付けた直径約30 nmの高密度顆粒を一つ持っていることでした。その密度の推定からLDBは核タンパク質であると予想されました。
本研究から巨大ウイルスにおける新たな構造学的知見がまた一つ発見できました。
*1 1 nmは1/1000,000 mm。
共同研究者情報
岡本健太(スエーデン ウプサラ大学)
科研費・補助金、助成金情報
科研費(基盤A分担、新学術領域公募研究)、生理研共同研究ほか
リリース元
Title: Cryo-EM structure of a Marseilleviridae virus particle reveals a large internal microassembly
Authors: Kenta Okamoto, Naoyuki Miyazaki, Hemanth K.N. Reddy, Max F. Hantke, Filipe R.N.C. Maia, Daniel S.D. Larsson, Chantal Abergel, Jean-Michel Claverie, Janos Hajdu, Kazuyoshi Murata, Martin Svenda
Journal: Virology 516: 239 (2018)
Date: Accepted 25 January 2018
DOI: 10.1016/j.virol.2018.01.021