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体温と代謝状態を感じるTRPM2チャネル

2018年02月26日 研究報告

 恒温動物は体温を一定の範囲に保ちます。多くの生物において、温度感受性TRPチャネル(化学物質、機械刺激、温度刺激など広範な刺激により活性化するイオンチャネルファミリー)が環境温などの温度を感じる働きをしています。興味深いことに、それらの温度感受性TRPチャネルのいくつかは深部体温に保たれた深部臓器に存在していて、体温により活性化することから、私たちはこれらを体温センサーと呼んでいます。TRPM2は体温センサーの一つで、脳、肝臓、脾臓、膵臓、免疫細胞に広範な細胞で機能しています。

 TRPM2の機能は体温だけではなく、カルシウムイオン、レドックスシグナル(細胞内の酸化還元状態を反映し、シグナル分子として機能する)、細胞内に存在するTRPM2活性化物質など、細胞内の代謝状態を反映する物質により活性が調節されます。私たちは、TRPM2の活性がどのようにして体温化で適切に調節されているのかを調べました。その中で、TRPM2の活性化する温度の閾値が、レドックスシグナルにより低下することで、体温化のTRPM2の活性が上昇するという、新しいTRPM2機能調節メカニズムを発見しました。さらに、そのTRPM2の活性が温度に依存した貪食能(病原体などの粒子を取り込む細胞の機能)の上昇、インスリン分泌能の上昇に関わっていることが分かりました。また、TRPM2は体温調節に関わっていることも報告されています。体温調節センターである視床下部、末梢神経に発現しているTRPM2が温度の上昇をモニターして、これらの神経でTRPM2が活性化することで、熱放散や涼しい場所を探索する行動を起こすことで、体温度下げる働きをしているようです。

 これらの結果から、TRPM2が体温と代謝を基軸とした生体機能の調節にかかわっていると考えられます。TRPM2が温度感受性の代謝センサーであるという新しいコンセプトが、まだ分かっていないTRPM2の機能を知る足掛かりになると期待されます。
 

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共同研究者情報

加塩麻紀子 愛知医科大学 生理学講座

 

科研費・補助金、助成金情報

加塩麻紀子 基盤(C)(17K08543)、若手研究(B)(15K18974)、若手研究(B)(25860172)、特別研究員奨励費(10J03850)

リリース元

Title: The TRPM2 channel: A thermo-sensitive metabolic sensor

Authors: Makiko Kashio & Makoto Tominaga

Journal: Channels

Issue: 11

Date: Sep 3, 2017

URL (abstract): http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19336950.2017.1344801

DOI: 10.1080/19336950.2017.1344801

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