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胎盤における母子間ミネラル輸送へのTRPM6の関与

2018年02月28日 研究報告

 胎児の正常な発達のためには子宮内のイオン濃度などさまざまな因子が一定に保たれる必要があります。特に妊娠終期においては、胎児の骨が形成し始めるため、それに必要なミネラルであるカルシウム、マグネシウム、亜鉛やリン酸を母親から胎児へ胎盤を介して供給する必要があり、それらが不足すると重篤な病態に陥ることがわかっています。しかしながらその分子メカニズムの多くは不明のままです。

 私達は先行研究においてTRPチャネルの1つであるTRPV6が母子間カルシウム輸送に必須であることを示唆する結果を得ていますが、今回、別のTRPチャネルであるTRPM6が母子間ミネラル輸送に関与するかどうかを解析しました。その結果、TRPM6は母子間輸送に重要な絨毛上皮細胞において、妊娠終期に機能的に発現してくることが明らかになりました。さらにその際、TRPM6は別のメンバーであるTRPM7と複合体を形成していることが示唆されました。TRPM6/TRPM7複合体は妊娠終期において、胎仔の骨形成に必要なカルシウムやマグネシウムを母親側から胎仔側へ輸送していることが考えられました。

 本研究の知見によって、母子間ミネラル輸送の異常による胎児脳の発育不全や心疾患、骨疾患に対する分子標的薬の開発が進むことが期待されます。

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胎盤におけるミネラル輸送の分子メカニズム(カルシウムの例)

妊娠終期の胎盤においてミネラルは細胞を通る輸送によって能動輸送されると考えられている。TRPV6とTRPM6はその能動輸送のうち、細胞内へのミネラの流入路として機能していると考えられる。
 

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リリース元

Title: Expression of the TRPM6 in mouse placental trophoblasts; potential role in maternal-fetal calcium transport

Authors: Yoshiro Suzuki*, Masaki Watanabe, Claire T. Saito, Makoto Tominaga M*

Journal: The Journal of Physiological Sciences

Issue: volume 67, Issue 1: pp 151-162, 2017

Date: Apr. 4, 2017

URL (abstract): https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs12576-016-0449-0

DOI:10.1007/s12576-016-0449-0

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