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レドックス感受性TRPチャネル;TRPA1、TRPM2

2018年02月26日 研究報告

 Transient receptor potential (TRP)ファミリーは、化学物質、機械刺激、温度刺激など広範な刺激により活性化して陽イオンを透過するイオンチャネルで構成されています。レドックスシグナル(細胞内の酸化還元状態を反映し、シグナル分子として機能する)は、細胞内のシグナル分子として機能しますが、TRPチャネルの中にはレドックスシグナルによって活性化を受けるものが知られています。特にTRPA1とTRPM2は、その機能が良く調べられています。

 マスタードオイル、ワサビ、シナモンなどに含まれる刺激性の物質、大気汚染物質などにより末梢神経のTRPA1が活性化されると、痛み感覚を引き起こします。内因性のレドックスシグナルによるTRPA1の活性化は炎症性の痛みを起こします。TRPA1は血液中の酸素レベルをモニターして呼吸のリズムを調節する機能、また血管拡張の調節に関わることも報告されています。

 TRPM2はレドックスシグナルだけではなく、温度にも感受性を持っており、レドックスシグナルと温度は相乗的にTRPM2を活性化します。TRPM2は免疫能と強い連関があります。炎症が起こると、免疫細胞はレドックス分子を産生します。このようなレドックスシグナルがサイトカインの遊離量を増やし、炎症が起こっている場所への免疫細胞の遊走を増大させることで炎症の悪化が進むと考えられています。一方で、TRPM2は食事による血中グルコース濃度の上昇によって起こるインスリン分泌にも関わることが知られています。

 レドックスシグナルは、好気的代謝に伴う有害な副生成物であるだけではなく、細胞内のシグナル分子としての有益な機能も知られるようになりました。このようなレドックスシグナルによるTRPA1とTRPM2の活性化は、これらのチャネルが病態や生理機能の両方に関わっていることを示しています。これらの発見はTRPA1とTRPM2機能の研究の発展に寄与することが期待されます。

 

共同研究者情報

加塩麻紀子 愛知医科大学 生理学講座

 

科研費・補助金、助成金情報

加塩麻紀子 基盤(C)(17K08543)、若手研究(B)(15K18974)、若手研究(B)(25860172)、特別研究員奨励費(10J03850)

リリース元

Title: Redox-Sensitive TRP Channels: TRPA1 and TRPM2

Authors: Makiko Kashio & Makoto Tominaga

Journal: REDOX, Principles and advanced applications

Issue:

Date: Sep, 2017

URL (abstract): http://dx.doi.org/10.5772/intechopen.69202

DOI: 10.5772/intechopen.69202

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