
謎の多いサルマラリア原虫の形態を連続ブロック表面走査電子顕微鏡で解析
マラリアは亜熱帯や熱帯地方に見られる感染症で、年間約70万人の死者が報告されています。マラリアを引き起こすマラリア原虫は、蚊を媒介として人を含む脊椎動物の赤血球に寄生することが知られています。特にヒトで症状が重篤化しやすい熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)などは、非常に多く研究されておりワクチンの開発も進んでいますが、一方でヒトに自然感染するサルマラリア原虫などの存在が、マラリア撲滅運動の行く手を阻んでいることがわかって来ました。
本研究では、これまでその形態が明らかになっていなかったサルマラリア原虫P. knowlesiについて、P. knowlesiを感染させた赤血球の形態変化を連続ブロック表面走査型電子顕微鏡SBF-SEMを用いて立体画像化することにより、詳細に調べました。ヒトマラリア原虫では、感染原虫はマウレル斑(MC)と呼ばれる膜状の構造を赤血球内に放出して、原虫が増殖するのに必要なタンパク質を赤血球の周辺に運ぶことが知られています。今回、サルマラリア原虫が感染した赤血球内に放出するシントン=ムリガン班(SMC)と名付けられた膜状の構造が、MCに相当することを発見しました。さらに、SMCは膜の周囲が膨らんだプレート状の構造をしており、その形態から細胞におけるゴルジ装置のような役割をするのではないかと考えられました。
本研究結果は、サルマラリア原虫の増殖に不可欠な構造体を明らかにしただけではなく、感染予防や原虫駆除のための創薬開発においても大きな示唆を与えるものでした。
共同研究者情報
坂口 美亜子、金子 修(長崎大学、熱帯医学研究所)
科研費や補助金、助成金などの情報
挑戦的萌芽研究
基盤研究(C)
ナショナルバイオリソースプロジェクト(京大霊長類研究所)
生理研計画共同研究
リリース元
Title: The Plasmodium knowlesi MAHRP2 ortholog localizes to structures connecting Sinton Mulligan's clefts in the infected erythrocyte
Authors: Kwame Kumi Asare, Miako Sakaguchi, Amuza Byaruhanga Lucky, Masahito Asada, Shinya Miyazaki, Yuko Katakai, Satoru Kawai, Chihong Song, Kazuyoshi Murata, Kazuhide Yahata, Osamu Kaneko
Journal: Parasitology International
Issue: 67, 481-492
Date: 2018.4.17 online; 2018.5.4 publish
URL (abstract): https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383576918300795?via%3Dihub
DOI: 10.1016/j.parint.2018.04.005