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タンパク質ナノブロックによる自己集合超分子ナノ構造の構築に成功

2018年06月19日 研究報告

 タンパク質や核酸、糖質、脂質などの生体分子は、個々の分子が自己集合してできた「超分子」と呼ばれる分子複合体を形成します。このような分子の集合体をコントロールして自由にデザインすることが生体分子工学やナノバイオテクノロジー、合成生物学の大きな目標の一つとなっています。


 信州大学の新井博士の研究グループは、これまでに、人工タンパク質の特徴的構造を活かした「タンパク質ナノブロック」を設計開発し、その対称な構造を幾何学的に組み合わせることで,多様な超分子ナノ構造複合体を創出してきました。そして本研究では、WA20と呼ばれる人工タンパク質を直線状に連結した新たなタンパク質ナノブロックextender Protein Nanobuilding Blocks (ePN-Blocks)を設計し、自己集合ナノ構造複合体を構築することに成功しました。


 ePN-Blocksは、Native PAGEなどの方法により、自己集合により様々な会合体を形成することが示唆されました。生理研との共同研究ではこの会合体をその大きさで分離し、それぞれ電子顕微鏡で観察しました。その結果、主に4~5分子以上のePN-Blocksからなる「ホモ多量体(homooligomers)」が15~20 nmのナノ構造体を形成していることが明らかとなりました。そして、さらにePN-Blocksを元のWA20 (sPN-Block)タンパク質と混合して自己集合させ直したところ、2種類のタンパク質ナノブロックを再構成した「ヘテロ複合体(heterocomplexes)」が構築され、これが直線状構造へもダイナミックな構造変換が可能になることが示されました(図)。


 本成果は、タンパク質ナノブロックを使って超分子の構造を自在に構築できることを示し、この技術を用いて将来は自由にタンパク質超分子をデザインすることができるようになると期待されます。
 

Fig01.jpg

 

共同研究情報

新井亮一(信州大学)
小林直也(生命創成探究センター)
 

科研費や補助金、助成金などの情報

科学研究費補助金(新学術領域「動的秩序と機能」など)

リリース元

Title: Self-Assembling Supramolecular Nanostructures Constructed from de Novo Extender Protein Nanobuilding Blocks
Authors: Naoya Kobayashi, Kouichi Inano, Kenji Sasahara, Takaaki Sato, Keisuke Miyazawa, Takeshi Fukuma, Michael H Hecht, Chihong Song, Kazuyoshi Murata, and Ryoichi Arai
Journal: ACS Synthetic Biology
Issue: 7, 1381-1394
Date: 2018.4.24 publish & online
URL (abstract): https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acssynbio.8b00007
DOI: 10.1021/acssynbio.8b00007
 

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