
シアノバクテリアが示す染色体のような構造を低温超高圧電子顕微鏡で立体的に可視化する方法を紹介
シアノバクテリアの一種は、細胞が分裂するときにDNAを凝集させて染色体のような構造を作り、遺伝子DNAを過不足なく娘細胞に分配することが知られています。この反応は細胞が分裂するまでの数分間だけ明瞭に観察されるため、その詳細な構造を調べることは困難でした。
本研究では、2016年に埼玉大学の金子康子教授と共同で、この瞬間的にしか見られない特殊なDNAの構造を捉えて、立体的に可視化することに成功しました(文献1)。本論文では、この手法の詳細をビデオでわかりやすく紹介します。
シアノバクテリアは光合成をする細菌で、2分裂しながら増殖します。本実験では、まずシアノバクテリアを正確な各12時間の明暗周期で培養することで、一斉に分裂するように仕向けます。次に、細胞分裂が起こる直前に、そのDNAを蛍光色素で染めて顕微鏡の下でDNAが凝集する瞬間をさらに正確にモニターします。そして、多くの細胞でDNA凝集が最も盛んに起こる瞬間を見計らって、細胞を液体ガス中で急速凍結します。これを生理研が保有する超高圧電子顕微鏡という特殊な顕微鏡に凍ったままセットし、氷が解けないような弱い電子線を使って画像化します。さらに、試料を傾けて様々な角度から投影像を撮影し、コンピュータを使ってその立体的な構造を再構築します。
本成果は、細菌のような小さな生命体が示す瞬間的な構造を立体的に可視化できることを示しました。本手法を応用することで、今後さらに多くのミクロの生命現象を可視化できるようになると期待されます。
ビデオ:http://www.jove.com/video/57197
文献1:Murata K, et al. (2016) Ultrastructure of compacted DNA in cyanobacteria by high-voltage cryo-electron tomography. Sci Rep 6, 34934.
共同研究者情報
金子康子(埼玉大学)
科研費・補助金、助成金情報
生理研超高圧電子顕微鏡共同利用実験
リリース元
Title: Visualization of DNA Compaction in Cyanobacteria by High-voltage Cryo-electron Tomography
Authors: Kazuyoshi Murata, Yasuko Kaneko
Journal: Journal of Visualized Experiments
Issue: 137, e57197
Date: 2018.7.18 publish & online
URL (abstract): http://www.jove.com/video/57197
doi:10.3791/57197