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hERG チャネルの緩徐な脱活性化の新たな構造基盤

2018年08月15日 研究報告

 電位作動性K+チャネルであるhuman ether-a-go-go related gene(hERG)チャネルは、主に心室筋における活動電位の再分極に重要であり、その電流はIKr電流として知られています。また、極めて遅い脱活性化を示し、その制御にはN末端細胞内ドメインであるEAGドメイン(図A)と、同じくC末端の環状ヌクレオチド(CN)結合相同(CNBH)ドメイン(図A)によるドメイン間相互作用が必要です。遺伝子異常や投薬によるこのチャネルの機能不全は、主にQT延長症候群の原因として知られており、深刻な場合は突然死に結びつくような致死性不整脈に発展する可能性があります。

 我々は本研究において、未だ詳細な機能が分かっていないCNBHドメインとその上部に位置するCリンカードメインへの変異が、特徴的な遅い脱活性化に影響し、EAGドメインとCNBHドメイン間の相互作用に関与することを調べるために、アフリカツメガエル卵母細胞とHEK293T細胞を使用した電気生理学的解析およびFRET解析を行いました。その結果、Phe860(側鎖が内在性のリガンドのようにCN結合ポケット内に存在、図B)と、Asp727およびArg752(本研究で、CリンカードメインとCNBHドメイン間で静電相互作用を形成することが示唆されたペア、図C)への変異は、いずれも脱活性化を加速させ、EAGドメインとCNBHドメイン間の相互作用を減弱させました。さらに、FRET解析の結果、EAGドメインとCNBHドメイン間の相互作用は、電位に依存した明確な変化を示しませんでした。

 これらの結果は、hERGチャネルのCNBHドメイン(およびCリンカードメイン)は、EAGドメインを伴う制御機構により、hERGチャネルの遅い脱活性化の調節に寄与することを示唆します。

 

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リリース元

Kume S, Shimomura T, Tateyama M, Kubo Y
Two mutations at different positions in the CNBH domain of the hERG channel
accelerate deactivation and impair the interaction with the EAG domain.

J Physiol. 2018 Aug 7. doi: 10.1113/JP276208. [Epub ahead of print]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30086184

 

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