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ウイルスキャプシドができる様子を位相差クライオ電子顕微鏡で解析

2019年01月15日 研究報告

 多くのウイルスは、その遺伝子がサッカーボールの柄で知られる正二十面体構造をしたタンパク質の殻で覆われています。その1種のレオウイルス科ウイルスは、さらに異なるパターンの多層の殻(キャプシド)で覆われた特徴的な構造をしています。その例としては、乳児下痢症を引き起こすロタウイルスがよく知られています。本共同研究では、レオウイルス科ウイルスの1つイネ萎縮ウイルス(Rice Dwarf Virus)略してRDVを用いて、パターンの異なる多層のキャプシドを形成する様子を遺伝子組み換え技術と位相差クライオ電子顕微鏡により明らかにしました。
 RDVは内殻をT=1、外殻をT=13と呼ばれる2層の異なるパターンの正二十面体キャプシドで覆われています。本研究では、外殻を形成するタンパク質に遺伝子組み換え技術を用いて緑色蛍光タンパク質(GFP)を結合し、これを用いてウイルス粒子を形成させました。その結果、GFPが立体的に邪魔をして不完全な外殻を持つRDV粒子を作ることができました。これを位相差クライオ電子顕微鏡で解析したところ、RDVの外殻は、内殻の特定の領域(3回軸上)にだけ結合することがわかりました。このことから、RDVの外殻タンパク質は、最初に内殻の3回軸上に結合し、これを元にパズルのピースを組み合わせるように順次挿入されて行くことがわかりました。
 本成果は、多層の殻を持つレオウイルス粒子がどのように形成されて行くかを世界で初めて明らかにしただけでなく、この結果を用いて効率的に粒子形成を阻害することで、レオウイルス感染症の予防法や治療薬の開発に応用できると期待されます。

20190115murata-1.jpg図 GFPを結合した外殻キャプシドタンパク質によるRDV粒子の位相差クライオ電子顕微鏡像(背景)とその三次元再構成像(中央)。RDV完全粒子の三次元像(右下)。

共同研究者情報

中道優介、堤 研太、宮崎直幸、東浦彰史、成田宏隆、中川敦史(大阪大学蛋白質研究所)
村田和義(生理学研究所)

科研費や補助金、助成金などの情報

科研費、AMED、生理研共同研究

リリース元

Title: An Assembly Intermediate Structure of Rice Dwarf Virus Reveals a Hierarchical Outer Capsid Shell Assembly Mechanism
Authors: Yusuke Nakamichi, Naoyuki Miyazaki, Kenta Tsutsumi, Akifumi Higashiura, Hirotaka Narita, Kazuyoshi Murata, Atsushi Nakagawa
Journal: Structure
Issue: 27: 1-10
Date: 2018.12.20 publish & online
URL (abstract): https://doi.org/10.1016/j.str.2018.10.029
doi: https://doi.org/10.1016/j.str.2018.10.029

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