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クライオ電子顕微鏡により明らかにされた緑藻類クラミドモナスが持つ超巨大光合成複合体PSI-LHCIの全体構造

2019年04月01日 研究報告

 陸上植物などで見られる光合成はこの世の中で最も効率よく光エネルギーを利用できるシステムとして以前から注目されています。これを実現しているものの一つが光化学系I(PSI)と呼ばれる色素とタンパク質でできた分子複合体です。PSIの周囲はさらに集光アンテナタンパク質複合体(LHCI)で囲まれており、太陽からの光を捕らえてそのエネルギーをPSIに送る働きをしています。陸上植物では4種類のLHCIがPSIに結合しているのに対して、緑藻類では9種類のLHCIの存在が知られていて、陸上植物よりも41%も光を集めるとされていますが、これらのLHCIがどのようにPSIに光エネルギーを送っているのかはわかっていません。
 本研究では、試料の精製方法を工夫することによってクラミドモナスのPSI-LHCIの完全な複合体を抽出すことに成功し、クライオ電子顕微鏡でその分子像を多数撮影し、その単粒子解析により6.9Å分解能でその構造を明らかにしました(図1)。結果、クラミドモナスのPSI-LHCIにはPSIの周りを10分子(LHCA1が2分子)のLHCIが取り囲んでいることがわかりました。それらは、PSIを挟んで一方に2層に分かれて8分子、もう一方に2分子結合していました。
 本成果により、LHCIからPSIへの光エネルギー伝達経路が明らかになるとともに、緑藻が持つ非常に高い光を集光する能力の仕組みを明らかにできました。これらの知見は、クリーンでさらに高効率の光電池の開発に応用できると期待されます。
 

 

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図1 クラミドモナスPSI-LHCIの6.9 Åクライオ電顕マップとフィットさせた原子モデル。

共同研究者情報

河合寿子、レイ・バートンスミス、得津隆太郎、皆川 純(基礎生物学研究所)
ソン・チホン、村田和義(生理学研究所)
 

科研費や補助金、助成金などの情報

科研費、AMED、生理研共同研究、ABiS

 

リリース元

Title: Ten antenna proteins are associated with the core in the supramolecular organization of the photosystem I supercomplex in Chlamydomonas reinhardtii
Authors: Hisako Kubota-Kawai, Raymond N Burton-Smith, Ryutaro Tokutsu, Chihong Song, Seiji Akimoto, Makio Yokono, Yoshifumi Ueno, Eunchul Kim, Akimasa Watanabe, Kazuyoshi Murata, and Jun Minagawa
Journal: Journal of Biological Chemistry
Issue: 294(12): 4304-4314
Date: 2019 Mar 22 published
URL: http://www.jbc.org/content/294/12/4304
doi: 10.1074/jbc.RA118.006536

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